薗潤(日本タバコフリー学会代表理事、医師) 

 2002年に世界保健機関(WHO)が、「タバコフリー・スポーツ、スポーツはタバコと無縁でやろう」と提唱して以来、世界のスポーツ界ではタバコ規制が進んできた。オリンピック(五輪)やワールドカップサッカーなどは、完全禁煙が既定方針となり、タバコ産業は大会の公式スポンサーから排除されている。

 東京五輪(パラ五輪を含む、以下同じ)では、直前の2020年4月に、改正健康増進法(健康増進法)と東京都の受動喫煙防止条例(都条例)が全面施行される。以下に東京五輪のタバコ対策について、いくつかの問題点を考えてみた。

 競技会場内の敷地内完全禁煙は、2018年冬の平昌五輪で初めて実施されたが、規則破りや近隣周辺での喫煙が問題になった。同様の問題は、五輪に限らず施設の敷地内禁煙実施に必ず付随して起こり、根本的な解決策は周囲(五輪の場合は競技会場外)も禁煙にすることしかない。役所が敷地内禁煙になり、役所周辺が条例で路上喫煙禁止になっているため、実質的に地方公務員が勤務時間内禁煙となった例もある。

 大会組織委員会のホームページによれば、競技会場は東京都内に限らず、42カ所が予定されている。最近、これに加えてマラソンと競歩が札幌市で開催されることになった。これらの競技では、観衆のいる沿道も競技場内と考えられ、沿道も完全禁煙の徹底が求められる。

 喫煙規制が遅れている競技の会場も心配である。プロ野球の球場には、観客用の喫煙所があり、監督・コーチ・選手用にダッグアウト裏の喫煙所があると聞いている。また先頃行われた野球の国際大会「WBSCプレミア12」は、東京五輪の予選とも言える大会だったが、テレビ放映のスポンサーに日本たばこ産業(JT)が入っていた。

 五輪の放映には、公式スポンサーから排除されているタバコ産業のCMが入らないことが必須である。バレーボールには男女ともJTのチームがあるし、ゴルフにはJTカップがありJTが多額の賞金のスポンサーだ。

 東京都は、健康増進法に上乗せして「受動喫煙を防止しにくい立場の従業員や、健康影響を受けやすい子供を守る」ことを都条例(「子どもを受動喫煙から守る条例」を含む)制定の目的としてうたっている。
成立した受動喫煙防止条例について説明する東京都の小池百合子知事(中央)=2018年6月27日、都庁
成立した受動喫煙防止条例について説明する東京都の小池百合子知事(中央)=2018年6月27日、都庁
 都条例は加熱式タバコを、より有害性が低いものと位置付け、「指定タバコ専用喫煙室」内では飲食可能としたが、大きな汚点である。諸外国に先駆けて加熱式タバコの人体実験場となった日本で、急性好酸球性肺炎などの重篤な副作用が報告されているからである。