2019年12月13日 12:29 公開

BBCニュース、リアリティ・チェック(ファクトチェック)チーム

インド政府は、近隣3カ国からの不法移民に市民権を与える法案を提出した。ただし、イスラム教以外の少数派宗教グループに所属していることを条件としている。

法案は、インドに不法に入国したヒンドゥー教、シーク教、仏教、ジャイナ教、パールシー教、キリスト教の各教徒について、イスラム教徒が多数を占めるパキスタン、バングラデシュ、アフガニスタンのいずれかの出身だと証明できれば、インドの市民権を申請できるとしている。

インド政府は、宗教的少数派が3カ国で減っており、信仰を理由に迫害に直面していると説明している。

だが、イスラム教徒の不法移民に対しては市民権取得への道を開くものではないため、法案は差別的との批判がインドで出ている。

果たして、それら3カ国における非イスラム教徒の現状はどうなのか。

非イスラム教徒の人数は?

インドのアミット・シャー内務相によると、パキスタンの非イスラム教徒人口は1951年以降、急激に減っている。

これは、パキスタンが1947年にインドから分離独立し、非イスラム教徒が集団で脱出すると同時に、インドからイスラム教徒が流入したのを反映している。

シャー氏は、パキスタンにおける非イスラム教徒の人口比は1951年時点で23%だったと説明。それ以降の数十年にわたる迫害で、さらに少なくなったとしている。

ただ、この数字は検証が必要だ。シャー氏は誤って、現在のパキスタンとバングラデシュ(旧東パキスタン)のデータを合計したと思われるからだ。

国勢調査によると、パキスタン(旧西パキスタン)のヒンドゥー教徒の人口比は、1951年に1.5~2%前後だった。それ以降、大きくは変わっていない。

同じ調査は、バングラデシュの非イスラム教徒の人口比については、1951年の約22~23%から、2011年には約8%に落ち込んでいることを示している。

つまり、バングラデシュで非イスラム教徒が大きく減っている一方、パキスタンでは非イスラム教徒は非常に少数だが人口比は安定しているのだ。


パキスタンとバングラデシュには、キリスト教、仏教、シーク教、パールシー教など、別の非イスラム教少数派も存在する。

パキスタンにはまた、政府が1970年代に非イスラム教と宣言したアフマディー教の教徒もいる。その数は400万人超と推定されており、同国最大の宗教的少数派になっている。

アフガニスタンでは、ヒンドゥー教、シーク教、バハーイー教、キリスト教の全教徒を含めた非イスラム教徒は、人口比0.3%に満たない。米国務省の報告書によると、アフガニスタン国内の2018年のシーク教徒とヒンドゥー教徒の総数は、紛争により国外へと逃がれた家族が相次いだ影響で、わずか700人ほどとなった。

非イスラム教徒の地位は?

インド政府の市民権法案は、「パキスタン、アフガニスタン、バングラデシュの憲法は、特定の国家宗教を定めている。その結果、ヒンドゥー教、シーク教、仏教、ジャイナ教、パールシー教、キリスト教のコミュニティーに属する人々は、それらの国々において、宗教を理由に迫害に直面している」と説明している。

パキスタンの国教がイスラム教なのは事実だ。アフガニスタンもイスラム教国家だ。

バングラデシュは事情がより複雑だ。1971年に非宗教的な憲法とともに国家が樹立された。しかし1988年、イスラム教が公式に国の宗教とされた。

これを覆そうと、長年にわたって法廷闘争が続いたが、同国の最高裁判所は2016年、イスラム教を国教とすると判断。闘争に終止符が打たれた。

ただし、これらの国の憲法はすべて、非イスラム教徒は信仰を実践する権利と自由があると明記している。また、パキスタンとバングラデシュでは、ヒンドゥー教徒が司法長官に就任するなど、高い役職に就いている。

少数派は差別に直面している?

実際には、非イスラム教徒の少数派は差別と迫害に直面している。

人権団体アムネスティ・インターナショナルは、パキスタンの不敬法を問題視。同法について、「不明確に規定され、警察や司法当局に恣意(しい)的に使われている。その方法は、宗教的少数派へのいやがらせや迫害に匹敵する」としている。


パキスタンから近年インドに移住したヒンドゥー教徒は、社会的、宗教的な差別を受けたとBBCに説明。とくに、シンド州におけるヒンドゥー教徒の女子に対するものが問題だったと話した。

イスラム教多数派から異端とされている、アフマディー教徒が差別されているのも事実だ。同教徒はインドの市民権法案に含まれていない。

2018年までに訴追された不敬事件の多くが、イスラム教徒やアフマディー教徒に対するもので、キリスト教徒やヒンドゥー教徒に対するものではない。

バングラデシュで何年間かにわたってヒンドゥー教徒が減っている理由はいくつかある。裕福なヒンドゥー教徒は自宅や事業所が攻撃される。彼らを追い出し、乗っ取りを狙っている場合もある。ヒンドゥー教徒は宗教的な武装勢力の攻撃目標にもなっている。

バングラデシュ政府は、少数派が狙われているというインドの主張を否定する。アブドゥル・モメン外相は、「この国で少数派が迫害されている例はない」とBBCに述べた。

国連のデータは、インドにいる難民の数が2016~2019年の間に17%増えたことを示している。今年8月時点で、国連に登録されたインドへの難民でもっとも多かったのは、チベットとスリランカからの難民だった。

(英語記事 Is India's claim about minorities true?