これらの「成長物語」を共有したコアなファン層が文字通り中心に位置しながら、雑誌やテレビ、新聞のような旧来メディアが頻繁に取り上げるようになれば、いよいよ「国民的アイドル」の必要条件を満たしてくる。ただし、コアなファンを手堅く確保し続ける必要があるので、従来型の「会いにいけるアイドル」、つまりライブ重視や成長物語の継続は重要なアピールポイントである。

 グレタ現象を支える二つのキーと思えるもののうち、コアなファン層形成に彼女は大きく成功している。グレタさんは、9月に国連本部で行われる「気候行動サミット」に合わせた、積極的な地球温暖化対策を求める若者たちの抗議活動「グローバル気候マーチ」に米ニューヨークで参加した。主催団体によると、参加者は163カ国・地域で400万人以上だったという。

 この環境運動ストライキの象徴はもちろんグレタさんであった。ただ、この段階では、既にマスメディアでグレタさんの活動が頻繁に紹介されていたので、本当のコアなファン層の実数を把握できない。

 ただし、「ライブ=デモ」に今後も参加することが、彼女がどんなに多忙であっても最優先の活動になるだろう。なぜなら、コアなファン層獲得には「会いに行ける」ことが極めて重要だからだ。

 アイドルの場合では、コアなファンたちがアイドルのおススメするグッズや関連商品を買ったり、発言の影響でライフスタイルまでまねることが多い。グレタさんは、飛行機による移動が環境に負荷を与えるとして、ヨットや鉄道での移動を好む。

 スウェーデン語で「flygskam(フリュグスカム)」と言われ、日本の一部メディアが「飛び恥」と紹介する、この効果が若い人たちに影響を与えているという。欧州の鉄道では「飛び恥」効果を織り込んで、補助金の活用や割引料金の導入などサービス拡大の商機としているようだ。
温暖化対策の強化を求め、米ニューヨークをデモ行進するグレタ・トゥンベリさん(手前左)=2019年9月(ゲッティ=共同)
温暖化対策の強化を求め、米ニューヨークをデモ行進するグレタ・トゥンベリさん(手前左)=2019年9月(ゲッティ=共同)
 ただ、飛行機を「悪者」扱いしすぎるのは禁物だろう。経済学者でミシガン大のジャスティン・ウォルファース教授の指摘によれば、飛行機はいまや自家用車よりもエネルギーの利用効率がよくなっているという。

 他方で、二酸化炭素(CO2)排出量の絶対値が大きいのも事実である。成長と環境配慮は二者択一の問題、つまりいずれか一方だけ採用してしまうと、社会全体の「幸福」を損ねてしまうだろう。