両親をはじめ、彼女を支援する「大人たち」は多いだろう。この「大人たち」はいろんな意味でアイドルの一種の「免罪符」としても機能する。コアなファンはアイドルに何かトラブルがあれば、その責任を運営=大人たちのせいにすることができる。うまくいっているときでも、「まわりの大人たちの意図には安易に妥協しないし、自分の意見をはっきり持つ」と、好意の論拠として「大人たち(運営)」を用いることがある。

 また、グレタさんに批判的な人たち、いわゆる「アンチ」も、彼女の周囲の「大人たち」にしばしば注目して、「彼女は周りの大人たちに利用されている」と批判する。だが、このアンチの発言とコアなファンの発言は同根である。言い換えると、アンチによるこの種の批判は、グレタ現象をかえって活発化することはあっても、決定的なダメージを与えることは難しいのである。

 この意味で、グレタさん自身には迷惑だろうが、世界各国の首脳や著名人たちが彼女の発言を批判することは、実はグレタ現象をアイドル現象として分析した場合に、筆者にとって見慣れた光景になる。つまり、人気アイドルにはアンチはどうしても発生するものなのだ。だからといって、厄介な迷惑行為が絶対に禁物であることを決して忘れてはならない。

 しかし、そのアンチが米国のトランプ大統領やロシアのプーチン大統領ともなると影響力が半端ない。アイドル論としてグレタ現象を読み解くときに、いまや「アンチ代表」のトランプ大統領こそが、実はコアなファンを凌駕(りょうが)する「トップオタ(TO、実はアンチのTOでもある)」になっているともいえる。

 タイム誌の「今年の人」の記事に、トランプ大統領が「(グレタさんは)友達と映画でも見に行け」といった批判的な趣旨をツイートすると、グレタさんは、自身のツイッターの自己紹介欄にトランプ大統領の発言を批判的に引用することで「応戦」していた。

 2人は一見すると、いや本当のところでもお互いに「宿敵」なのだろうが、おそらくコアのさらにコアなグレタファンになると、このやり取りに対して違う感想を抱いたとしても不思議ではない。ひょっとして「直接にやりとりできるトランプ大統領がうらやましい。だから彼を批判する」という感情が芽生えているかもしれない。この辺りまで来ると推測の域を出ないが、可能性は十分にあるだろう。

 ただ、彼女のアンチに地球温暖化問題の「重大責任者」の一人でもある中国の習近平国家主席がいないのが気になる。グレタさんの論法からすれば、「私たちについてこなければならない」という「権力者たち」の筆頭に、CO2排出量で断然の世界トップである中国の指導者が挙げられるのは道理である。
米ニューヨークの国連本部で、トランプ大統領(左)を見るスウェーデンのグレタ・トゥンベリさん(中央)=2019年9月(ロイター=共同)
米ニューヨークの国連本部で、トランプ大統領(左)を見るスウェーデンのグレタ・トゥンベリさん(中央)=2019年9月(ロイター=共同)
 まさか、中国が発展途上国だとか、成長の果実をまだ十分に得ていないから遠慮しているだとか考えているのだろうか。そのような理屈ならば、世界の権力者たちと意見は大差ないはずだ。

 ひょっとしたら、グレタさんは「くまのプーさん」のファンなのかもしれない。プーさんは中国で検閲対象になったと言われるほど、習主席に似ているとSNS上で話題になっている。第25回締約国会議(COP25)からの帰国途中に彼女がツイッターに投稿した、ドイツ鉄道の車中で膨大な荷物の横で座る自身の写真に、筆者もプーさんを探したのだが、どうもいないようだった。