リングダール裕子(ベルゲン大常勤講師)

 子供が親に虐待され、殺される事件が後を絶たない。心が張り裂けるようである。驚くべきことに、今年1月に起きた千葉県野田市の小4女児死亡事件では、加害者である当の父親は、職場で温厚な人として一同から好かれていたという。これはいったい何を意味しているのだろうか。

 日本の子供は両親に従い、学校では教師に、そして社会のルールに従うことを徹底的に教え込まれる。確かに、始業時間を厳守することが、交通事故に気をつけるよりも大事であるような雰囲気があると、ある小学校の教師から聞いたことがある。そんな教育環境で育った子供が大人になって、日本の社会を築いていくのだ。

 私の住むノルウェー西部ベルゲン市のある高校では、日本の高校と姉妹校になっており、年に一度学校を相互訪問している。ある年、日本から来た高校生がこちらの高校を訪問し、日本の学校などの紹介をする際に、メモを見ながら発表していた。

 ところが暗記せずに臨んだことで、その生徒は日本側の教師から怒鳴られたそうだ。その光景を目の当たりにしたベルゲンの高校生はショックを受けてしまった。

 怒鳴られた理由も全く理解できなかったし、メモを見ながら発表することがなぜいけないのか、全く腑に落ちなかった。また、日本の高校生たちは常に教師の目を気にしており、不安な様子を見せていたという。

 ノルウェーの学校でも、メモなどを見ずに発表することを生徒に要求する教師がいることは確かだ。特に試験の際には、メモを見ながらであれば成績に響く、ということは生徒自身も理解している。

虐待で亡くなった小4女児の自宅前に手向けられた花束=2019年2月、千葉県野田市
虐待で亡くなった小4女児の自宅前に
手向けられた花束=2019年2月、千葉県野田市
 だからといって、国際交流の場でメモを見ながら発表して、注意されることはまずない。もし注意しなければならない場合でも、外国からの招待生徒の目の前では決してなく、後で当の生徒と2人きりの場所で、穏やかに行うのが普通だ。

 そもそも、日常の学校内で教師が生徒を叱りつけることはしない。常に穏やかな調子で生徒を指導しているため、生徒たちが教師の目を気にして始終怯えることはあり得ない。