2019年12月18日 12:02 公開

ドナルド・トランプ米大統領が自分が連邦下院に弾劾されるのを阻止しようと民主党幹部を罵倒する手紙を送るなか、「RBG」の愛称で知られるアメリカのルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事はBBCに対して、トランプ氏は「法律の訓練を受けていない」と感想を述べた。

米連邦最高裁のギンズバーグ判事はBBCに対して、「大統領は法律家ではない、法律の訓練を受けていない」と話した。さらに、トランプ氏が下院の弾劾調査で自分は公平な法定手続きを受けなかったと主張していることについて、そうではなく「下院が起訴して、上院が審理する」のが憲法で定められた手続きなのだと説明した。

また、上院で多数を占める与党・共和党幹部のミッチ・マコネル上院院内総務などが、下院が弾劾を決議し上院で弾劾裁判を行うことになった場合、上院はホワイトハウスと提携して審理を進めると表明していることについて、「審判する側が中立であるべきか? もちろんです。中立であることが判事の役目です」と話した。

共和党の上院幹部がすでに審理開始前から「もうどう結論するかは決めてある」と発言していることについて、BBCのラジア・イクバル司会者から聞かれると、「もし判事がそのようなことを言ったら、判事はその事件の担当から解任されます」とギンズバーグ氏は述べた。

ギンズバーグ判事は、米バーグレン賞の受賞記念イベントで、BBCのインタビューに答えていた。哲学と文化のためのバーグレン賞は毎年、「人間の理解と進歩に大きな影響を与えた」考えを提唱した人に与えられる。

86歳のギンズバーグ判事は、現在の米最高裁で最高齢のリベラル派判事。がんや骨折などで入院することもあり、その健康状態を大勢が気にかけている。

トランプ氏は就任以来、保守派の判事を2名、最高裁判事に指名し、2人とも上院の承認を経て就任した。この結果、判事計9人の最高裁は現在、保守派が多数とみられている。

受賞イベントでのギンズバーグ氏の話題は多岐にわたった。たとえばアメリカで激しい議論の続く女性の人工中絶権については、今年になって中絶を認める最高裁判例に抵抗して禁止する州法が保守層の多い州で次々と成立したことに触れ、「貧しい女性ばかりが規制対象になっている」と問題視した。

地元で中絶が禁止されても他州に移動して手術を受ける経済的余裕のある女性はそうするが、「貧しい女性は飛行機代やバス代が払えない。別の州に行って手術を受けるため、仕事を1日休む余裕もない」と判事は述べた。

弾劾決議を前に大統領は

野党・民主党は、トランプ氏が自分の政敵を捜査するようウクライナ大統領に働きかけ、その取引材料に軍事援助の凍結解除やホワイトハウスでの首脳会談実施を持ちかけたとして、下院で弾劾手続きを進めてきた。下院は民主党が多数を占めるため、トランプ氏による権力乱用と議会妨害の2条項を含む弾劾決議案を、18日にも本会議で可決する見通し。弾劾決議が可決されれば、トランプ氏はアメリカ史上、下院に弾劾された3人目の大統領となる。

大統領など米政府公職者への弾劾とは刑事裁判における起訴に相当する。下院が弾劾を決議した場合、上院が弾劾裁判を開く。そこで有罪を認めれば大統領は罷免されるが、上院で多数を占める共和党は、トランプ氏に無罪判決を与える見通し。

こうした状況で、トランプ氏は今月初めにも、最高裁が自分の弾劾を阻止できるのではないかとツイート。「極左の訴えはまったく成り立ってない。(ウクライナ大統領との電話会談の)通話記録を読め。こんなことそもそも認められない。やめさせるため最高裁に行けるか?」と書いていた。

ギンズバーグ判事の今回の発言は、こうしたツイートや共和党幹部の発言について意見を聞かれてのもの。

トランプ氏、手紙で民主党を罵倒

トランプ氏は17日、民主党幹部にあてた6ページの手紙で、民主党が「アメリカの民主主義を壊している」と非難した。

ウクライナ大統領への自分の電話は「完全に潔白だ」とこれまでの主張を繰り返し、「ありとあらゆる真実、事実、証拠、法的原則に背いて、弾劾支持に投票するすべての議員は、いかに自分が有権者を憎み、いかに自分がアメリカの憲法秩序を唾棄しているか、あらわしている」と強い調子で書いた。

手紙はさらに、「この国を建国した人たちは、党派対立による国民の分断を恐れた。建国の父たちが最も恐れたことを、あなたたちは現実のものにしようとしている」と、民主党幹部を非難。最後に、100年後の人たちは今回のてんまつを理解し、「このようなことが二度とほかの大統領に起きないよう」に学習するはずだと結んだ。

(英語記事 Trump is not a lawyer - Ruth Bader Ginsburg