2019年12月18日 12:33 公開

イギリス政府は、欧州連合(EU)離脱協定を国内で法制化する離脱協定法案に、ブレグジット(イギリスのEU離脱)後の移行期間を延長しないとする条項を追加するもようだ。

ボリス・ジョンソン首相がEUとまとめた離脱協定には、通商協定などの交渉のための移行期間が設定されている。期限は2020年12月だが、最大2年まで延長が可能だ。

しかし、今週にも採決が行われる予定の法案の修正案では、いかなる延長も認めない方針だ。

ジョンソン首相は17日に始まった議会で、この条項を追加することで何年にもわたる「膠着(こうちゃく)状態、躊躇(ちゅうちょ)、遅れ」を終わらせると述べた。

総選挙後、初の議会演説でジョンソン氏は、優先事項は「ブレグジットの実現」だと強調。また、憎しみに満ちた数年間を経て、今後は「共通項」を見いだし、「新たな、優しい精神」で政治に臨むと約束した。

12日の総選挙で保守党は、野党に対し80議席の優位を得て、過半数議席を獲得した。首相官邸は、20日にも離脱協定法案についての最初の審議と採決を行う予定だと発表している。

最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、与党・保守党の選挙勝利を称えた一方、ジョンソン首相は今後、選挙戦中に行った「たくさんの、たくさんの約束」を実現するかどうか「審判される」とくぎを刺した。

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イギリスは2016年6月に行われた国民投票でEU離脱を決定。しかし離脱協定の交渉などが難航し、現在は2020年1月31日が離脱期日となっている。

離脱後、同国とEUはすぐに将来の経済関係についての交渉に入る。これには漁業権や消費者水準、環境水準、金融サービスなど、一筋縄ではいかない領域が含まれている。

通商協定の締結には通常、数年がかかるため、EU高官からは移行期間内に協定を締結できるか疑問の声が上がっている。合意に至らなかった場合、両者は世界貿易機関(WTO)の定めるルールにのっとって貿易を行うことになり、輸出入に関税が発生する可能性がある。

BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長は、移行期間延長を除外すれば、ブレグジットを一刻も早く「実現」させたい人々には恩恵となる一方、政府が軟着陸のブレグジットに移行するのではないかと期待していた人々は失望するだろうと分析した。

また、BBCリアリティーチェック(ファクトチェック)チームのクリス・モリスは、2020年末まででは非常に基本的な協定しか結べず、さまざまな重要事項が未解決のままになるだろうと指摘。イギリスはEUの基準や条件を受け入れることになる一方で、ジョンソン氏が約束している国境での検問回避は難しいだろうと述べた。

野党からは反発の声

労働党のサー・キア・スターマー影のEU離脱相は、ジョンソン首相の方針は「無謀で無責任」だと批判。ジョンソン氏は「雇用を危険にさらそうとしている」と話した。

自由民主党のサー・エド・デイヴィー党首代行も、「ジョンソン首相が2020年12月の期日までに協定を締結するには、これまで離脱派の有権者にしてきた約束を全て諦め、EUの要求を全て飲むしかない」と指摘した。

また、EUのミシェル・バルニエ首席交渉官は、EU側は期限内に協定を結べるよう「最大限のことをする」と述べた。イギリスが移行期間の延長を拒否したことについては、「イギリスが求める手続きのために行った選択だ」と答えた。

労働者の権利にも変更か

英紙インディペンデントによると、ジョンソン政権は移行期間延長を除外するほか、「ブレグジット後に労働者の権利を弱めない」とする条項も除外する可能性があるという。

マイケル・ゴーヴ・ランカスター公領相は、労働者の権利は別の法案で「守られる」と話し、政府は離脱協定法案を「すっきりと明確に」可決できるようにしたいのだと説明した。

これに対し労働党のジョン・マクドネル影の財務相は、政府は「我々の基本的権利や企業活動に必要な明確性を犠牲にし、イギリスを(ドナルド・)トランプ米政権を支援する租税回避地にしようとしている」と批判した。

合意なしブレグジットの可能性は?

英シンクタンクの欧州改革センターに所属するサム・ロウ氏はBBCのラジオ番組で、移行期間を延長しないことで、ジョンソン首相はEUと譲歩する際に保守党を制御しやすくなると指摘した。

また、「合意のない離脱の可能性もまだある」と述べた上で、「問題はジョンソン首相が合意なしブレグジットを欲しているかということだが、最近の動向ではそうではないようだ」と話した。


イギリス議会、今週の動きは

17日、18日

下院議長の選出が行われ、11月に前任のジョン・バーコウ氏に代わって選ばれたリンジー・ホイル議長が再選された。議会ではその後、2日にわたって議員の宣誓式が行われている。宣誓式では王冠に対する忠誠を誓うか、宗教上の宣誓を行う。1866年議会宣誓法によると、宣誓のないまま議会で発言や投票行った場合、「死んだ者のように」議席を奪われることになっている。

19日

議会が正式に開会される。中心となるのは女王の演説で、議会の開会を宣言するとともに、今議会での政府の施政方針が発表される。演説の内容はその後、下院で審議される。

20日

ジョンソン首相がどれだけ早く動きたいかに寄るが、女王の演説の審議が20日までずれ込む可能性もある。その後、議員は演説の内容を採決する。1924年以降、演説が否決されたことはない。

また、政府はこの日に離脱協定法案を議会に提出したい考え。

総選挙前の議会では10月、政府が提出した法案を可決したものの、10月31日というEU離脱期限までに法案を成立させるための3日間という短期の審議日程案は否決され、ジョンソン首相は離脱期日の延期を受け入れた。

(英語記事 Brexit bill to rule out extension