2019年12月23日 14:26 公開

長期的な森林火災に見舞われているオーストラリアで、住宅地への被害が拡大している。ニューサウスウェールズ州の知事は22日、「壊滅的な」火災によってひとつの集落がほどんと焼き尽くされてしまったと語った。こうした中、22日まで米ハワイでクリスマス休暇を過ごしていた同国のスコット・モリソン首相が、大きな批判を浴びた。

ニューサウスウェールズ州のグラディス・ベレジクリアン知事によると、シドニー南西部にある人口400人ほどのバルモラルは「ほとんど何も残っていない」という。同州では19日、2度目の非常事態宣言が出されている。

オーストラリアでは9月以降、各地で高温と乾燥した気候による森林火災が続いており、消火活動が難航している。これまでに9人が亡くなり、数百軒の家屋が破壊されたほか、数百万ヘクタールに延焼した。

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信じられない干ばつ

ニューサウスウェールズ州ではこの週末、小さな町が相次いで火災に見舞われ、大きな損害をこうむった。

バルモラルは数日前に「グリーン・ワトル・クリーク・ファイア」と名付けられた火災に襲われたが、風向きが変わったことで再び被害を受けた。

住民は現在、安全のためにバルモラルに戻ることが禁止されている。住宅の被害件数は明らかになっていない。

ベレジクリアン知事は、「できるだけ早く住民が自分の土地や不動産の様子を確認しに行けるようにしたい。しかし、安全が第一だ」と話した。

「もし資産が焼失したとしても、戻って何が残っているのか、取り戻せるものはないかを探したいはずだ」

バルモラルでは現時点では犠牲者は出ていないが、消火に当たった消防隊員数人が負傷したとの報告もある。

ニューサウスウェールズ州では、22日夜の時点で98カ所で森林火災が発生。そのうちまだ50軒が鎮圧されていない。

同州・地方消防局のベン・シェパード捜査官は、「我々は現在、信じられないほどの干ばつ期にある。一部の地域では、12カ月以上雨が降っていない」と説明した。

「火災はクリスマス以降も拡大し続けるだろう」

気象予報では、24日と25日にニューサウスウェールズ州の山火事発生地域で雨が降る予定だが、来週にはまた気温が高くなると予想されている。

気象当局によると、向こう2カ月間は大規模な雨の予測はないという。

クリスマス休暇中の首相に批判

こうした中、モリソン首相がクリスマス休暇で米ハワイ州に滞在していることが明らかになり、批判が集まった。

消防隊員の労働組合のレイトン・ドリュリー会長は、「この政権は全くリーダーシップが欠けている。不名誉なことだ」と述べた。

インターネットでは、「#WhereisScoMo (スコット・モリソンはどこだ)」や、火と解雇の両方の意味がある「Fire」にかけた「#FireMorrison(モリソンをくびにしろ)」といったハッシュタグがトレンド入りした。

モリソン首相は20日朝、声明を発表し、「このような時に私が家族と国を離れたことで、悲惨な山火事の被害を受けた多くのオーストラリア国民の気分を害したことを深く後悔している」と謝罪。

首相は当初予定を早め、22日に帰国した。

帰国後の記者会見でモリソン首相は、「自分の家族がひどく大変なときに私が家族と休暇中だったため、大勢が不快に思ったことは分かる」と述べた。それと共に、19日に消火活動中に亡くなった消防士2人をたたえた。

気候変動への対応にも非難

モリソン首相とその政権については、気候変動に何も対策をとっていないという非難も多い。

一連の森林火災と気候変動に直接の因果関係はないが、科学者らは長年にわたり、気温が上がり乾燥がひどくなれば、森林火災の頻度も深刻さも高まると警告していた。

しかし、政府は森林火災の危機が起きても、気候変動の影響について言及してこなかった。これに対する抗議デモも起きている。

22日に帰国した首相は、気候変動によって気象パターンが変化していることは認めたもの

オーストラリアは、気候変動への対応について国際的にも批判されている。国連は、オーストラリアが主要20カ国(G20)の中で二酸化炭素(CO2)などの排出量削減目標に達していない数少ない国だとしている。

モリソン氏は、オーストラリアの排出量は世界の総排出量の1.3%にしかならないと主張している。しかし、石炭火力発電に依存しているため、国民1人当たりの炭素汚染物質の排出量は世界でも最大級と言われている。

(英語記事 'Not much left' of Australian town ravaged by fire / Australia fires: PM Scott Morrison sorry for Hawaii holiday during crisis