吉川圭一(グローバルイッシューズ総合研究所代表)

 大みそかの『NHK紅白歌合戦』に出場する女性アイドルグループ、AKB48が行うパフォーマンスが発表されたが、率直に日本のソフトパワーを顕示するよい機会になると強く感じている。そのパフォーマンスとは、AKBグループがアジア8都市の姉妹グループのエースアイドルを集めた『恋するフォーチュンクッキー~紅白世界選抜SP~』である。

 姉妹グループがある8都市は、言わずもがな日本にとって、政治や経済面で重要な国ばかりだ。それだけに、今回の紅白の企画を踏まえれば、あくまで筆者の推測だが、8つの海外拠点を含むAKBグループが、2020年東京五輪・パラリンピックの演出に一役買うのではないかとさえ思う。

 ただ、こうした流れに水を差しかねないのが、くすぶり続けているNGT48のメンバー襲撃事件をめぐる騒動だ。記憶に新しいと思うが、昨年12月にメンバーの山口真帆(当時)がファンの男性2人に襲撃され、その後運営会社であるAKS社幹部の対応に非難が集まった。

 要するに、この騒動は、AKS社のいわゆる企業不祥事を内部告発した女性タレントと100%株主(当時)の社長との間に、激しい対立が起こった現象と、まとめることができるだろう。それは株主としての利潤、さらには社長としての社会的地位(体面)や個人的感情による部分が大きかったようだ。

 一時的とはいえ、この騒動がAKBグループ全体のイメージを悪化させ、ファンという消費者に対して、良質なエンターテイメントを提供するのが難しくなった感は否めない。そのためAKBグループを使ってきたテレビ局やレコード会社、広告主、女性タレントをAKBに派遣している芸能事務所、その他の利害関係者も信用の低下や利益の低減により、非常に苦しい状況になったといえるだろう。

 報道などによると、この利害関係者の中には、数年前、AKS社長に同社の株式を全て買い取られ、プロデュースを外注する形になったとされる秋元康氏も含まれている。そこで秋元氏は、被害女性である山口真帆を実にきれいにNGTから送り出し、大手芸能事務所に所属させた。

 5月に行われた山口真帆の卒業公演は、秋元氏とAKS社の一部の協力で、襲撃事件の暗いイメージを払拭するものになった。対立していた二つの組織の協力によってマイナスをプラスに転換し、まさに危機管理能力を発揮したといってよいだろう。

 こうして秋元氏は「関連会社のパワハラに苦しむ女性タレントを救った善意の人」というイメージを手に入れ、このNGT騒動に関する彼への追及も和らいだ。そして9月18日には『サステナブル』という新曲を発表し、これが150万枚に上る今年のベストセラーとなった。このため、NGT騒動があったにもかかわらず、AKBグループは紅白に出場できることになったといえるだろう。
東京・秋葉原にあるAKB48劇場
東京・秋葉原にあるAKB48劇場
 ベストセラーとなった『サステナブル』は、『恋するフォーチュンクッキー』と背景がよく似ている。タイトルや歌詞にAKBを巡るスキャンダルを匂わしている点だ。こういう自らの惨めな姿をあえて顕示して人々の注目を集めることを、古い日本語で「見返し」というのだろうか。