若林亜紀(ジャーナリスト)

 テレビ局の記者と就職希望の女性(当時)の間に起きたトラブルを巡る訴訟の判決が世間を騒がせている。国会議員や政府高官同士の不倫報道も続いている。

 セクハラ、不倫はマスコミ業界、そしてお役所にはよくある話である。単純に、女性の数が多いからだろう。私もかつてお役所に働き、幾度もセクハラを受けた。それも、セクハラ防止のお膝元、厚生労働省の労働問題研究所でのことだ。

 私は33歳のとき、出版部の「週刊労働ニュース」という労働新聞の編集部に異動を希望した。同僚に薦められ、編集長に申し出たところ、飲みに誘われ、「不倫しよう」と言われた。失礼に当たらないように「私は独身で、結婚相手探しに一生懸命です。不倫をしている暇はないのです」と断った。すると、異動はなかった。

 結果、研究所の国際交流部門に配属になった。上司は、厚労省から出向してきた労働基準監督官だった。その上司から、シンガポールへの出張同伴を打診された。頭の先からつま先まで舐めるように見回され「あなたと出張に行ったら、僕はセクハラしない自信はないな」と言われた。

 業務の多忙を理由に断ったら、次の定期異動で図書館に飛ばされた。また、仕事の延長で国際機関への出向を希望したが、選ばれたのは、くだんの上司の海外出張に同行した女性だった。

 退職後、最初のセクハラについて本人訴訟を起こした。編集長は「原告の異動希望先の管理職であり、直属の上司部下ではないのでセクハラにはあたらない」と反論したが認められず、一審で私が勝訴した。だが、二審では証拠不十分で私が敗訴した。しかし、編集長はセクハラ常習者で同僚からも相談を受けていたので、復讐(ふくしゅう)・再発抑止にはなったと満足している。

 男女雇用機会均等法が禁じるセクシュアルハラスメントとは、職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けることである。対価型セクハラと呼ばれる。また、性的な言動が行われることで職場環境が悪くなり、仕事を進めるにあたって悪影響が出ることもセクハラとなり、環境型ハラスメントと呼ばれる。

 だから、「食事に行こう」と誘ったり、「つきあってほしい」などと言ったりするだけではセクハラに当たらない。独身の方々は、心配しないで社内恋愛をしてほしい。

 では、好みの異性を採用したり、役職に抜てきしたり、仕事上でえこひいきをしたりするのは許されるのか。
※写真はイメージです(GettyImages)
※写真はイメージです(GettyImages)
 私は国際機関への出向者の選考が「情実人事」だと、職場の労働組合に相談した。だが、労組の委員長から「気持ちは分かるけど、使用者には人事の裁量権があるので、どうにもできない」と言われた。裁量権の乱用であるか、環境型または対価型のセクハラであると客観的に証明できなければ、賠償請求は難しいのが実情である。

 時の話題で考えてみると、テレビ局の記者が、就職あっせん希望の女性を夕食やホテルに誘っただけでは、日本の法律でセクハラには当たらない。女性は、暴行事件として警察に訴えたが不起訴となり、民事裁判で損害賠償を求めて、一審で認められた。同じ頃、野党議員が、党関係者の女性に車内でわいせつ行為をしたとして起訴された。