首相補佐官が、厚生労働省の女性官僚と京都出張に行き、公費で雇いあげたハイヤーで手をつなぎながら観光を楽しんだというのは、横領または職務専念義務違反、および国家公務員倫理法に規定する「国民の疑惑や不信を招くような行為」に当たるだろう。

 なお、相手の意向を尊重すること、対等なコミュニケーションは、恋愛や私的関係の基本である。夫婦間でさえレイプは許されない。相手が拒否したり嫌がっているのに、一方的に誘い続けたり、つきまとうことは「ストーカー行為等の規制に関する法律」違反となる。断られても何度も電話をしたり、FAXを送ったりすることについては、今のところ違法ではない。電子メールやSNS(会員制交流サイト)などでしつこくメッセージを送ることは、「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限り」禁止されている。

 既婚者が独身と偽って独身者と交際することは、貞操権の侵害となる。これも私のいた職場で実際にあった話である。独身側が労組に相談して大騒ぎとなり、既婚者側は離婚。しばらくして双方とも退社した。

 日本のセクハラ法制は、あいまいな部分が多く、甘いとも言える。違法なことは素人目に明白であっても、裁判で勝つことは少ないし、時間と裁判費用がかかり、被害者は精神的に消耗する。

 裁判で懲りた私は、予防に気をつけるようになった。私は不倫はしない、という方針だったので、誘われそうなときは、あらかじめ相手の言いそうなセリフを想定して断る練習をするようになった。そのため、ジャーナリストになってからは、この手のトラブルはほぼない。リスクを想定して対応を準備しておくことが、損失や腐敗防止のリスク管理の基本だ。

 アメリカでは日本よりも気軽に訴訟がなされ、セクハラ加害者本人だけでなく、会社がセクハラを放置した、防止措置を取らなかったという職場環境の配慮義務違反で数十億円、数百億円といった巨額の賠償を命じられている。そのため、企業は面倒を避けるために、社内恋愛も禁止の方向にあるという。

 いずれにせよ、録音・録画機器が小型化したり、スマホに録音機能がついたりして、やりとりの記録がしやすくなった。そして、役所や企業にはコンプライアンスの窓口ができて相談しやすくなった。もみ消されれば、かえって被害者の恨みが募り、マスコミやインターネットに情報を流すことが増えた。当事者だけでなく、第三者が録音・録画して告発するかもしれない。

 録音・録画は、あらかじめ相手に断って行わない限り、刑事、すなわち刑罰を決める裁判の証拠とはならない。ただし、賠償を請求する民事裁判の証拠にはなりうる。民事賠償の時効は違法であると知ったときから3年である。

 逆に、美人局(つつもたせ)や嘘の告発もあるかもしれないので、上司のほうが扉を開け放しておいたり、第三者を同席させたり、あらかじめ断って録音録画する、といった自衛策も必要になろう。
※写真はイメージです(GettyImages)
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 自民党の元副大臣が女子大生から、過去の援助交際の事実をばらされた。割り切った交際や円満な別れであっても、不倫などであれば、社内抗争で追い落とすために第三者から暴露されてしまうリスクがあるので公職者・重責者は要注意だ。

 職場恋愛は悪いことではない。力関係を利用したり嘘をついて相手を性的に搾取したり、デート代に公金を使ったり、公的な権限を私的に使って愛人に不当な利益を与えたりといった、せこいことをしなければいいだけだ。