木村悠(元世界ライトフライ級王者)

 今夏、待ちに待った東京五輪・パラリンピックが開催される。ただ、筆者が長年取り組んできたボクシングは競技から除外される危機を乗り越えただけに、感慨もひとしおだ。

 そもそも、東京五輪では33種競技339種目が行われることになったが、その過程で「ボクシング競技実施」について審議がなされた。
 
 五輪競技への採用は国際オリンピック委員会(IOC)総会で決定され、その基準はオリンピック憲章に定められている。その中の「国際競技連盟の統治能力に問題がある場合、その競技のオリンピック除外があり得る」という部分にボクシング競技は抵触してしまったのだ。
 
 以前から、統括団体の国際ボクシング協会(AIBA)の審判の選任方法や、財政面の不透明をはじめ、会長が「麻薬に関わる重要人物」として指摘されるなど、協会の不祥事が続発していた。
 
 そのためIOCは、組織運営や財政、審判の不正などで問題を抱えているAIBAに承認団体の資格停止処分を科した。これにより、ボクシング競技の実施が危ぶまれたが、IOCのバッハ会長は「選手の夢を担保したい」と述べ、AIBAではなくIOCの特別チームが主体となって、東京五輪でのボクシング競技実施を決定した。

 関係者の間でも、ボクシングの東京五輪開催について不安を抱いていただけに、筆者も含めて胸を撫でおろした。
 
 当然だが、アマチュアボクシングとプロボクシングは、別団体が運営している。しかし、アマで経験を積んだ選手が、プロ入りするケースが多いため、アマの競技衰退は、そのままプロボクシングにも影響する。それだけに五輪競技に採用されたことの意義は大きい。
 
 ボクシングは、プロの頂点が世界チャンピオンになるが、アマチュアの頂点は五輪の金メダリストになる。プロの世界チャンピオンは、1952年に世界フライ級チャンピオンに輝いた白井義男を筆頭に、これまで92人誕生している。だが、五輪でメダルを獲得した選手は以下の5人だけだ。

・ローマ(1960年)田辺清(フライ級)銅

・東京(1964年)桜井孝雄(バンタム級) 金

・メキシコシティ(1968年)森岡栄治(バンタム級) 銅

・ロンドン(2012年)清水聡(バンタム級)銅 村田諒太(ミドル級)金

ロンドン五輪のボクシング男子ミドル級決勝で優勝し、表彰式で金メダルを披露する村田諒太=2012年8月、英ロンドンのエクセル(代表撮影)
ロンドン五輪のボクシング男子ミドル級決勝で優勝し、表彰式で金メダルを披露する村田諒太=2012年8月、英ロンドンのエクセル(代表撮影)
 このように振り返ると、五輪でメダルを獲得することの難しさが分かるだろう。そもそも出場するには、国内で勝ち抜き、さらにアジア予選を勝ち抜く必要がある。