2019年12月31日 15:51 公開

米ニューヨーク州で28日夜、ユダヤ教指導者の自宅を刃物を持った男が襲撃し、5人を刺した疑いで逮捕された。捜査当局は30日、殺人未遂や憎悪犯罪(ヘイトクライム)などの罪状で訴追した男は、日記に反ユダヤ的内容を書きつづっていたと明らかにした。28日にはロンドンでも、ユダヤ教礼拝所や店舗に反ユダヤ的な落書きが描かれる事件が起きている。

調べによると、グラフトン・トマス容疑者(37)は28日夜、ユダヤ教超正統派の信者が多く住むニューヨーク州モンジーで、ユダヤ教の重要な光の祝祭「ハヌカ」を祝っていたイスロエル・カハン師の自宅に押し入った。カハン師によると、「大きな音をたてて玄関を閉じると、『お前たちは誰もここを出られない』とかそのようなことを言い、長刀を取り出し、凶行に及んだ」という。

現場にいた信者の男性によると、容疑者は続いて家の隣の礼拝所に入ろうとしたが、中にいた人たちが扉に鍵をかけていたため、自動車で逃走した。

警察によると、事件を目撃した人たちがナンバープレートの番号を通報したほか、通過する車両のナンバーを道路の監視装置が捕捉したため、現場から南東のニューヨーク市内に入った時点で拘束され、逮捕された。

殺人未遂罪のほか、連邦地検は憎悪犯罪で容疑者を訴追。検察によると、容疑者は日記に、ユダヤ人を象徴する「ダビデの星」が描かれていたほか、「ユダヤ人が大量虐殺をしているのに、どうして反ユダヤを嘆く」などと書かれていた。また、スマートフォンの最近の履歴から、インターネットで「なぜヒトラーはユダヤ人を憎んだのか」、「近所のドイツ系ユダヤ寺院」、「ユダヤ人が創設したアメリカの主要企業」などと検索していたことが分かったという。

検察によると、ほかにも容疑者は「ナチス文化」やナチスを象徴するカギ十字などを検索。犯行前には、ニューヨークで反ユダヤ攻撃の後に警察の警備が強化されたことに関する記事にアクセスしていたという。

トマス容疑者は無罪を主張している。容疑者のマイケル・サスマン弁護士は、容疑者に精神病歴があることを指摘。さらに、犯行の動機が反ユダヤ主義によるものという証拠はないと主張している。

事件を受けてアメリカ各地の警察は、ユダヤ人が多く住む地域や礼拝所の警備を強化している。

アメリカで反ユダヤ攻撃は増えているのか

ニューヨーク市警は28日、憎悪犯罪部門が12月13日以降に捜査している反ユダヤ事件は8件に上ると明らかにした。

ブルックリン地区にあるユダヤ教正統派組織の本部に男が押し入り、発砲すると脅した事件のほか、30歳女性が女性3人の顔を平手打ちしたとされる事件などが含まれるという。

ニューヨーク市警のダーモット・シェイ本部長によると、2019年に市内で起きたヘイトクライムは前年比22%増だという。

「カギ十字の落書きがあったり、窓からレンガを投げ込んだり。子供たちと通りを歩いている女性のかつらを、通りすがりにいきなりひきはがしたり」など、さまざまな形の犯行が増えていると、本部長は話した(訳注:ユダヤ教徒の女性は髪を隠すためにかつらを被っている)。

今年4月にはカリフォルニア州サンディエゴのユダヤ教礼拝所で男が、女性指導者を殺害し3人を負傷させる事件があった。そのちょうど半年前、昨年10月にはペンシルヴェニア州ピッツバーグのユダヤ教礼拝所で男が銃を乱射し11人が死亡するという、アメリカ国内でユダヤ人を標的にした事件として最悪の無差別殺人事件が起きている。

(英語記事 Monsey stabbing: Journals of attacker 'referenced Jews'