川上和久(国際医療福祉大教授、吉本興業「経営アドバイザリー委員会」座長)

 大みそかの風物詩『NHK紅白歌合戦』、坂本冬美の歌唱前に登場したビートたけしをたまたま眺めていたときのことだった。たけし恒例の「表彰状ネタ」で、ちょうど紅白にゲスト出演した際のエピソードに入ったところだ。

 「本番で出ていった瞬間に『残り10秒』というカンペを出されてしまい、わたしはそのまま闇営業に行こうかと…」とたけしが口走ると、総合司会の内村光良に「やめてください、生放送です!」と突っ込まれ、会場は笑いに包まれたのである。それだけ「闇営業」という言葉を誰もが知っており、2019年を象徴する言葉であることを印象付けたシーンだった。

 恒例の「2019ユーキャン新語・流行語大賞」で、年間大賞には、ラグビーワールドカップの盛り上がりで「ONE TEAM」が輝いた。それでも、トップ10に「計画運休」「軽減税率」「スマイリングシンデレラ/しぶこ」「タピる」「#KuToo」「◯◯ペイ」「免許返納」「令和」と並び、「闇営業」が選出されている。

 思えば、吉本興業に所属するタレントは、世相を反映させる数々の流行語を生み出して、新語・流行語大賞の受賞対象となってきた。2008年にエド・はるみの「グ~!」が年間大賞に選ばれたのをはじめ、レイザーラモンHGの「フォーー!」(05年)、楽しんごの「ラブ注入」(11年)、とにかく明るい安村の「安心してください、はいてますよ」(15年)がトップ10に入っている。

 「闇営業」という言葉も、それまで国語辞典にも載っていなかった、いわば造語だ。しかし、吉本のタレントが自らの芸を磨きながら創り出し、世間にアピールした言葉ではない。

 吉本のタレントによる、週刊誌が暴き出した「不祥事」を象徴する言葉として流行語になったことは、会社としては不名誉な事態であった。
2019新語・流行語大賞では「ONE TEAM」が年間大賞を受賞したほか、「闇営業」がトップ10に選ばれた=2019年12月2日(鴨川一也撮影)
2019新語・流行語大賞では「ONE TEAM」が年間大賞を受賞したほか、「闇営業」がトップ10に選ばれた=2019年12月2日(鴨川一也撮影)
 発端は2014年12月に、詐欺グループに関わっていた人物が代表を務める団体の忘年会に、吉本のタレントらが参加した様子が、19年6月になって週刊誌に掲載されたことだった。その時点で、親会社の吉本興業ホールディングス(HD)では、当該タレントの処分以外に、こういった問題を今後起こさないためにどうしたらいいか、組織としての対応が検討されていたのも当然の話である。

 その延長線上に「経営アドバイザリー委員会」構想が浮上した。そして、私がこの委員会の座長をお引き受けすることになった。