どんな組織でもそうだが、制度としては設けていても、それを守ろうとする人の「思い」がなければ、制度が機能しているとは言えない。

 第三の優先課題は、直営業にしても反社勢力との決別にしても、「設けたルールを守ろうとする意識を醸成していく」ことだ。その意味では、従前からコンプライアンス研修を行っていたが、コンプライアンスの順守が企業を守り、ひいては自分自身のタレントとしてのパフォーマンスを発揮できる基礎になることを一人一人が理解し、納得しなければならない。

 今回の不祥事で、「流行語大賞」でトップ10に入ったレイザーラモンHGは謹慎、楽しんごは契約解除となった。芸人の世界は浮き沈みが激しいと言われる。それでも、委員会の発言の中で印象的だった言葉がある。「知識を意識にしていくことが大事だ」という言葉だ。

 タレントは企業の社員とは違う。自らよって立ちながら、パフォーマンスを発揮して社会的評価を得ることで、吉本という企業とも「WIN-WIN」の関係を構築することができる。そのために最低限必要なことは何なのか、見失いがちだったことから今回の事件が起きたと言えよう。

 12月20日、経営アドバイザリー委は中間とりまとめを行うことができた。優先課題として取り上げた点以外にも、諮問されたガバナンスの問題など4回の委員会を開催して闊達(かったつ)な議論を行い、2019年の区切りに、まずはこれからなすべきことについて一定の方向を示すことができたと思っている。ご関心のある向きには、同社のホームページにも掲載されているのでぜひご覧いただきたい。

 この中間とりまとめに対し、吉本HDの大崎洋会長と岡本社長の連名によるコメントも頂戴している。
2019年12月20日、吉本興業の経営アドバイザリー委員会の中間とりまとめ報告をした川上和久座長
2019年12月20日、吉本興業の経営アドバイザリー委員会の中間とりまとめ報告をした川上和久座長
 不名誉な週刊誌報道で流行語大賞にノミネートされるのは、これで終わりにしなければならない。そのために経営アドバイザリー委員会があったのだから。タレントが自らの創意工夫で最大限のパフォーマンスを発揮し、今年の流行語大賞でも旋風(せんぷう)を巻き起こしてもらいたい。

 吉本興業は、笑いを基軸としてエンターテインメントを世間に提供しながらも、さらに幅広い飛躍を目指している。そのためには、今回のことだけでなく、さまざまな問題が起きた際に、単にその問題を解決するだけでは済まない。

 問題の背景を読み取ることで、ピンチをチャンスにし、発展につなげていく強靱(きょうじん)なガバナンスが求められているといえよう。