2020年01月10日 11:30 公開

8日にテヘランで墜落したウクライナ航空機は、イランが発射したミサイルに撃墜された可能性があると、西側諸国の首脳が主張している。誤射の可能性があるという。

カナダのジャスティン・トルドー首相は9日、オタワで記者会見し、イランが発射した地対空ミサイルが原因との見解を示した。イギリスのボリス・ジョンソン首相も「具体的な情報」があると同調し、徹底的な調査が必要だと述べた。

一方イランは、空軍によるミサイル攻撃を否定している。

ウクライナ航空PS752便(ボーイング737型機)は8日午前6時12分(日本時間午前11時42分)、テヘランのイマーム・ホメイニ空港からウクライナの首都キーウ(キエフ)に向かって出発した直後に墜落。170人以上の乗客乗員全員が死亡した。

旅客機墜落の約5時間前には、イラン革命防衛隊が司令官殺害への報復として、イラク国内2カ所の米軍基地に多数の弾道ミサイルを発射していた。

アメリカ軍は3日未明、ドナルド・トランプ大統領の命令でイラク・バグダッドでイラン革命防衛隊コッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官を殺害。8日未明にはイランがその報復として、イラク国内で米軍が駐留する少なくとも2カ所の空軍基地を弾道ミサイルで攻撃したばかりだった。

「徹底的な調査が必要」

トルドー首相は9日夜に開いた記者会見で、複数の消息筋からの証拠が、ウクライナ航空機がイランの地対空ミサイルによって撃墜されたことを示していると発表。ただし、意図的な攻撃ではなかった可能性があると述べた。

「徹底的な調査が必要だ。カナダ国民は疑問を抱いている。答えを得る権利がある」

一方でトルドー氏は、責任の所在を明らかにしたり結論を出すには尚早だと述べ、証拠の詳細についても言及しなかった。

墜落機にはカナダ人が63人乗っていた。また、キーウ経由でトロントへ向かう乗客も多く乗っていたという。

「意図的ではなかった可能性」

ジョンソン首相も、イランの地対空ミサイルが墜落の原因だという「具体的な情報」を得ていると発表した。また、情報は「意図的ではなかった可能性」を示しているとしている。

墜落では4人のイギリス人が犠牲になった。事故当初はイギリス人の犠牲者は3人と伝えられていたが、英首相官邸は9日、4人の死亡を確認したと発表した。

ほかに、イラン人82人、カナダ人63人、全乗員9人を含むウクライナ人11人、スウェーデン人10人、アフガニスタン人4人、ドイツ人3人が死亡。うち15人が子どもだったという。

安全保障担当の閣外相ブランドン・ルイス氏はBBC番組「クエスチョン・タイム」に出演し、「イギリス政府はこの件についてカナダ政府と協力している。ジョンソン首相も、エマニュエル・マクロン仏大統領やアンゲラ・メルケル独首相など各国の首脳と連絡を取っている」と説明した。

その上で、墜落の原因について「正しく適切な調査」が行われるよう求めていると話した。

アメリカの見解は?

アメリカのドナルド・トランプ大統領は9日、墜落機に何が起きたか「不信感」を抱いていると話した。

「不信感を持っている。私が見る限りこれは悲劇、悲劇だ。しかし一方で、誰かが間違いを犯したのかもしれない」

米メディアは、米軍基地を攻撃した後のイランが米軍の反撃に備えるなか、ウクライナ機を米軍機と間違えた可能性があると報じている。

米CBSニュースは米情報機関筋の話として、人工衛星が2発のミサイル「発射音」を感知し、その後、爆発音を検出したと報じた。

また、米誌ニューズウィークは国防総省と情報機関、イラクの情報機関からの話として、ウクライナ機に向かって発射されたのはロシア製のミサイル「トール」だと伝えている。

ウクライナ国家安全保障・国防会議のオレクシイ・ダニロフ議長は9日、ミサイル以外の墜落原因として、ドローンなど飛翔体との衝突、エンジン不良、テロ行為による旅客機内で爆発などが考えられるとの見解を示した。

また、同国の調査チームがすでにイラン入りしており、墜落現場にミサイルの破片が残されていないか捜索していると述べた。イランは、ロシアのミサイル防衛システムを導入している。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「国際法にのっとり、徹底的かつ独立した調査が行われるだろう」と話し、協力態勢を強化するためにイラン首脳陣と会談すると発表した。


イラン側の主張

イラン民間航空局のアリ・アベドザデフ局長は、「空港から西へ離陸した旅客機は、墜落時、問題が起きたために右に旋廻し、空港に戻ろうとしていた」と発表した。

また、墜落前に飛行機が「燃えていた」という目撃証言があったこと、空港に戻ろうとする前に操縦士からの緊急連絡はなかったことなどを明らかにした。

その上で、「科学的に見て、ミサイルがウクライナ機を直撃したというのは不可能だ。そうしたうわさは論理的ではない」と述べた。

アリ・ラビエイ政府報道官も、ミサイルによる撃墜だとの報道は「心理戦争」だと批判。「この墜落機で犠牲者が出た国は代表を送ればいい。我々もブラックボックスの調査プロセスに参加してもらうため、ボーイングに代表を送れと要請した」と述べた。

イラン政府関係者はBBCのフランク・ガードナー安全保障担当編集委員に、イランのミサイルが旅客機を墜落させたという報道は「アメリカのプロパガンダ」と反発。「国際社会に厳密な証拠を出さないままの言い分には価値がない。証拠があるなら、騒ぎ立ててイランに対する今後の行動の裏付けにするため世論を操作しようとする前に、国際機関に証拠を共有するべきだ」と述べた。

調査は誰が?

国際航空法では、イランが調査の主導権を握ることができる。しかし、通常は航空機メーカーが調査に携わる。

また、アメリカで生産されたボーイング機が関わる事故では通常、同国の国家運輸安全委員会(NTSB)が国際調査に携わるが、事故の起きた国の許可が必要なほか、その国の法律に従うことが求められる。

アベドザデフ局長は当初、「アメリカ人と航空機メーカーにはブラックボックスを渡さない」と言明。「この事故はイラン航空当局が調査するが、ウクライナ当局も参加する」としていた。

しかし、イラン外務省はボーイングに対し、調査に加わるよう正式に要請を出した。ロイター通信はイラン政府高官の話として、NTSBも調査に加わることになったと報じている。

一方でアベドザデフ局長は、どの国がブラックボックスを調べるのかには言及していない。ブラックボックスには、コックピットの会話やフライトデータが記録されている。

ウクライナのダニロフ議長は、今回の墜落の調査には、2014年にウクライナ東部で起きた、マレーシア航空機のミサイルによる撃墜を調査した専門家を派遣するとしている。

イランでは、墜落現場でブルドーザーが使用されている様子がテレビで報道された。

「いつもニコニコしていた

死亡した4人のイギリス人のうち、3人は身元が発表された。

そのうちの1人、モハメド・レザ・カドコダ・ザデフさん(40)は、ウエスト・サセックス州ハソックスでクリーニング店を営んでおり、9歳の娘がいた。

勤勉な働き者で、従業員からも愛されていたという。

サム・ゾケイさん(42)はイギリスの石油メジャーBPのエンジニアで、休暇で滞在していたイランから戻るところだった。

友人はゾケイさんについて、「いつもニコニコ笑していて、前向きなエネルギーにあふれていた」と語る。また、「遠くて面白い場所への旅行を愛していた」という。

サイード・タフマセビ・カデマサディさん(35)はエンジニアリング会社レイン・オロークで働き、博士課程の学生でもあった。

昨年、イラン人のニロウファル・エブラヒムさんと結婚した。エブラヒムさんも、墜落機の搭乗者名簿に名前が記載されていた。

イランの救急当局は、犠牲者のうちイラン人は147人と伝えている。これはイランとの二重国籍を持つ外国人が65人いたためと考えられる。

ウクライナ航空は、墜落機の乗客について情報提供のヘルプラインを解説した(+38-044-581-50-19)。

(英語記事 Trudeau believes that Iran missile downed jet / PM: Evidence suggests Iran missile shot down plane)