2020年01月11日 19:19 公開

イラン政府は11日午前、首都テヘランで8日に墜落したウクライナ航空PS752便について、「人的ミス」によって「意図せず」して撃墜したことを認めた。墜落では乗客乗員176人全員が死亡した。8日未明にはイラン革命防衛隊が司令官殺害の報復としてイラク国内2カ所の米軍基地に多数の弾道ミサイルを発射していた。

イラン国営テレビはイラン軍の声明を読み上げ、ウクライナ航空機を誤ってミサイルで撃墜したと明らかにした。革命防衛隊の「機密上重要な軍施設」の近くを旅客機が飛行したため、「敵性標的」と誤認したという。

米軍との緊張関係が高まる中でイラン軍は「最高レベルの臨戦態勢」にあり、「そのような状況で、人的ミスのため、そして意図しない形で、旅客機を撃墜してしまった」と説明した。

軍は旅客機撃墜について謝罪し、将来的にこのような「ミス」を防ぐために防衛システムを刷新すると述べた。さらに、責任の所在を明確にし、責任者を訴追する方針を示した。

イランのハッサン・ロウハニ大統領はツイッターで、「軍の内部調査の結果、残念ながら、人的ミスによるミサイル射撃がウクライナ機の恐ろしい墜落と176人の罪のない人たちの死亡の原因となってしまった。このひどい悲劇と許されない過ちについて、(責任者を)特定し訴追するため、調査を継続する」と書いた。

https://twitter.com/HassanRouhani/status/1215856039997984768?s=20


イランのジャヴァド・ザリフ外相はツイッターで、被害者の遺族に謝罪し弔意を示しつつ、責任の一端はアメリカにあると批判。「アメリカの冒険主義が引き起こした危機の時に、人的ミスが起きて、この悲惨な事態につながった」と書いた。

ウクライナ航空機は8日午前6時12分(日本時間午前11時42分)、テヘランのイマーム・ホメイニ空港からウクライナの首都キーウ(キエフ)に向かって出発した直後に墜落した。

多数のイラン人やカナダ人、ウクライナ人、スウェーデン人、アフガニスタン人、ドイツ人、イギリス人が犠牲になった。15人が子どもだったという。

米紙ニューヨーク・タイムズが入手した動画には、テヘラン上空の夜空をミサイルが横切り、飛行機と接触して爆発する様子と思われる映像が映っていた。接触から約10秒後に大きな爆音が地上からも聞こえ、燃える機体はしばらく飛び続けた。

イランは当初、テヘランの国際空港を離陸した直後のウクライナ航空機が墜落したのは、自軍のミサイルが原因だという西側諸国の主張を退けていた。

しかし、西側各国の情報機関が、イラン関与の疑いを相次ぎ指摘。57人の犠牲者が出たカナダのジャスティン・トルドー首相は9日に記者会見し、イランが発射した地対空ミサイルが原因との見解を示した。イギリスのボリス・ジョンソン首相も「具体的な情報」があると同調し、徹底的な調査が必要だと述べていた。

<関連記事>

9日には、シャベル機が墜落現場の残骸を取り除くテレビ映像が放送されたため、事故原因の重要な証拠が撤去されたのではと懸念が高まった。イランは完全な事故原因調査を約束し、ウクライナやカナダ、アメリカの航空当局の参加を要請した。

10日にはカナダのフランソワ=フィリップ・シャンパーニュ外相がイランに、「世界が注目している」と警告し、乗客乗員の遺族は「真実を求めている」と強調していた。

イランの謝罪に反応は

カナダのトルドー首相は、「国民的な悲劇」だと声明を発表。「被害者の遺族や大切な人たちのため、透明性と正義」を要求した。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「イラン政府が責任者を裁判にかけるよう期待する」と述べた。

ウクライナ国際航空の幹部は、優秀な乗務員や航空機が原因であるはずなど最初からなかったとコメントした。


なぜカナダ人が大勢乗っていたのか

カナダには、イラン移民が大勢住んでいる。最新の連邦国勢調査では、イラン系の市民が約21万人いた。

そのほか、カナダはイランの大学院生や博士号取得後の研究生にとって人気の留学先だ。冬休みで帰省していた学生が多く、撃墜されたウクライナ航空機に乗っていたのは、そのためだ。

加えて、カナダとイランの間には直行便がない。そして、テヘラン発キーウ(キエフ)経由トロント行きの乗り継ぎは、最も安いルートのひとつのため、特に人気だった。


<解説> 事態沈静化のための動き――リーズ・ドゥセットBBC国際報道主任特派員

イランにとってきわめて重要なタイミングで、イランは重要な内容を認めた。

これほどの悲劇的な間違いについて責任を認めるのはきわめて異例なことだが、イランがいま直面する危機もきわめて異例だ。

イランは西側との新たな舌戦を防ぐため、そして相次ぐ悲劇に見舞われる自国民の怒りや悲しみの増大を防ぐため、この大惨事の責任を認めることにした。

イラン政府が事態の沈静化を図ったのは間違いない。

国内での反響や影響がどうなるかは、間もなく明らかになるかもしれない。イランの外相はすでに、「アメリカの冒険主義が引き起こした危機」が原因だと、責任の一端をアメリカに着せようとしている。

しかし、いったい誰があの時に、民間旅客機のテヘラン出発を許可したのだろう。それが何より疑問だ。イラン領空があれほどの非常事態にあった、あの時に。

(英語記事 Iran plane crash: Ukrainian jet was 'unintentionally' shot down