富坂聰(ジャーナリスト、拓殖大学海外事情研究所教授)

 蔡英文再選―。このニュースに快哉(かいさい)を叫んだ日本人は少なくなかったはずだ。2020年の台湾総統選は、争点が「大陸との距離」になったことで、中国の経済的影響力の拡大に抗して民主主義や人権といった価値観を守ることができるのか否かが大きな焦点になったからだ。

 もちろん総統選の全てが、単なる外交政策をめぐる二択の国民投票の視点から説明できるはずはない。だが、日本人の目には明らかに「反中」と「親中」の戦いだった。

 結果、中国に対する明確な「ノー」が突き付けられ、香港の区議会(地方議会)選に続き、共産党政権が一敗地にまみれた。

 大いに留飲の下がる思いだと日本人が受け止めたのも無理はない。こちらも日々、巨大化する中国の圧力にさらされているのだ。

 だが、それにしても、うっかりそんなことを口に出したり、表現することには明確な一線が敷かれているべきだろう。

 驚いたのは、インターネットの反応だ。

台湾総統選で蔡英文氏が再選されたことを報じる2020年1月12日付の台湾各紙(共同)
台湾総統選で蔡英文氏が
再選されたことを報じる
2020年1月12日付の台湾各紙(共同)
 蔡英文総統の再選に関し、中国が「独立に断固反対」と報じたヤフーニュースのコメント欄には、「元々台湾は中国じゃないだろう」という書き込みが最初に見つかる。書き込みへの「賛同」も7400を超え、「反対」の約250票を大きく上回っている。つまり、このニュースに関心を示したネット民の反応は共有されているということだ。

 2番目のコメントも「もともと違う国なんだから、独立反対はおかしいと思うんですが。香港変換(ママ)時の約束を一年も守らなかったので、一国二制度を餌にしても誰も信じません」と同じトーンだ。やはり「賛同」が約6800で、200程度の「反対」の約30倍だ。