日本人は台湾人に親近感を覚えるので、心情的に「台湾独立」を応援することは理解できる。しかし国としての約束は守らなければならない。これが原則だ。

 ついでだから「親日・台湾」についても書いておけば、私は1980年に台湾で中国語の学習を始めた。そのとき使った教科書には田中角栄首相に対する恨みつらみが満ちていて、南京大虐殺について「謝れ」と責められることは日常茶飯事だった。その記憶があるから日本人が今気軽に「台湾は親日」と言うのを聞くとヒヤリとする。

 日本軍が中国大陸で最も激しく戦った相手は国民党軍だ。その蒋介石は戦後、戦争に負けた日本に対し「賠償放棄をして、さらに日本の国際社会への復帰を後押しした」―実際はアメリカの要求が大きかったのだが―にもかかわらず、中国が大きくなったら日本はそっちと国交を結び、台湾を捨てた。

 少なくとも45歳くらいまでの台湾人は、そんな記述のある教科書で育っているのだ。眠っている記憶がよみがえらないと誰が言えるのだろうか。

 台湾が世代交代し、今の日本への親近感は確かだとしても、過去に好き放題やった日本が、自ら「親日」などと口にするは少し慎重であるべきだろう。
2020年1月12日、台湾の総統府で握手する蔡英文総統(右)と日本台湾交流協会の大橋光夫会長=台北市(中央通信社=共同)
2020年1月12日、台湾の総統府で握手する蔡英文総統(右)と日本台湾交流協会の大橋光夫会長=台北市(中央通信社=共同)
 少し話がズレたが、日中関係において中国が最も神経質になるのが、この台湾問題なのだ。

 中国への宣戦布告とまで評された2018年秋の「ペンス演説」にあっても、実は台湾問題では「従来の政策を維持する」とわざわざ触れている。そのことには理由があるというわけだ。

 外野席から「元々台湾は中国じゃない」などと、モノを知らない人が言うのは勝手だ。だが、これが大きな空気となり、影響を受けた政治家が人気取りで同じことを口にすれば外交問題に発展する。それは当然のこと共同声明にも反する行為だ。

 昨年から日本は「国家間の約束を守れ」と韓国に対して繰り返し主張してきたが、ほとんど同じ構図で、日本が責められても文句は言えまい。