片山修(経済ジャーナリスト、経営評論家)

 果たして、事件は仕組まれた陰謀だったのか。

 会社法違反(特別背任)と金融商品取引法違反の罪で起訴された日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告は1月8日午後、逃亡先のレバノンで記者会見し、自らの容疑は「クーデター」によるものだとする持論を展開し、改めて無実を主張した。

 ゴーン元会長の逮捕からさかのぼること3年ほど前から、日産と仏ルノー、フランス政府の間はぎくしゃくしていた。ルノー株の15%を持つ大株主であるフランス政府が自国での雇用や生産活動を強化するため、ルノーと日産の経営統合案を画策したのだ。

 日産は猛反発した。ゴーン元会長も当初、ルノー・日産のアライアンスは、「ウイン・ウイン」の関係でなければ機能しないとして、フランス政府を牽制(けんせい)した。実際、三菱自動車を加えた3社アライアンスは、資本の論理を優先した提携がことごとく失敗に終わる中、緩やかな連携によって成長を続けてきた数少ない成功例だ。

 フランス政府との交渉役を担ったのは、当時、副社長の西川(さいかわ)廣人氏だ。フランス政府から日産の経営には介入しないとの約束を取り付けた。このときの奮闘ぶりを買われて、西川氏は後日、ゴーン元会長から次期社長に推薦されたといわれる。

 ところが、フランス政府との「密約」と引き換えにゴーン元会長は変節した。その「密約」とは、2022年までにルノーと日産の統合を進めるという条件のもと、ゴーン元会長のルノー最高経営責任者(CEO)の任期を22年まで延長するという内容だったといわれる。
横浜市西区にある日産自動車グローバル本社の外観=2019年10月(古厩正樹撮影)
横浜市西区にある日産自動車グローバル本社の外観=2019年10月(古厩正樹撮影)
 つまり、ゴーン元会長は、自らのルノーCEOの続投を見返りにフランス政府に譲歩したのではないかと報じられている。それこそ、ゴーン元会長の「変節」による一種の単独「クーデター」を仕掛けたといっていい。