篠原章(評論家・批評.COM主宰)

 カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)に絡む収賄容疑で秋元司衆院議員(自民、東京15区)が東京地検特捜部に逮捕されたのは昨年12月25日のこと。再逮捕もあって勾留期間は1カ月を越えようとしているが(1月23日現在)、秋元議員は今も全面的に否認しているという。

 目下特捜部が立件している秋元議員の収賄額は700万円余りである。特捜部が国会議員の収賄事件に乗り出す場合、「収賄額1千万円」が一つの目安とされるが、秋元議員の収賄額が1千万円に届くかどうか微妙なところだ。

 特捜部は、秋元議員の逮捕を皮切りに「政界にはびこるIR汚職」を大々的に摘発したいという思惑を持っているのだろうが、秋元議員以外の国会議員については今のところ立件できる状況にはなさそうだ。

 また、特捜部はIR業界だけでなくパチンコ業界にも捜査の手を伸ばしているが、1月20日には会期150日に及ぶ通常国会も始まっている。不逮捕特権もあり、当面、国会議員からさらなる逮捕者が出るとは考えにくい。まだまだ予断は許さないが、このまま行けば「政界を震撼させる疑獄」には発展せず、「秋元議員の事件」に終わる可能性もある。

 そもそもこの事件は単なる「贈収賄事件」ではない、というのが私の見方である。以下、その理由を記していきたい。
 
 まず、日本のIR事業への参入を目指していた中国企業「500ドットコム」が、同社顧問に迎えた紺野昌彦(贈賄罪で起訴)、前浦添市会議員である仲里勝憲(同)両氏にカネを引き出された面もあるということだ。
 
 要するに、紺野氏と仲里氏は「政治家を買収すればIR市場に参入できる」と500ドットコムに持ちかけて多額の現金を用意させた上、日本に不法に持ち込み、一部を政治家にばらまいたと思われる。

 これまでメディアで報じられた情報を総合すると、両氏が絡むこの贈収賄事件については以下のように整理される。

 【2017年9月】

 500ドットコムの香港の口座から引き出した2250万円を紺野氏らが関西空港から日本に持ち込んだ。紺野氏は大阪から東京に移動して仲里氏らとともに議員会館を訪れ、IR担当内閣府副大臣の秋元議員に300万円、元政策秘書に50万円を渡した(元政策秘書は在宅起訴)。

 紺野、仲里両氏は札幌まで行き、中村裕之衆院議員(自民、北海道4区)に200万円、船橋利実前衆院議員(自民、比例北海道/当時は落選中)に100万円を渡した。中村議員はうち100万円を岩屋毅衆院議員(自民、大分3区)に渡した。ただし、秋元議員は受領を否定。

 また、中村議員によれば、この200万円は紺野氏ではなく、北海道の留寿都(るすつ)でIR事業を進める札幌の「加森観光」会長からの個人献金であり、岩屋議員は、中村議員から受け取った100万円は「講演謝金」だったと説明。船橋議員は、100万円の受領は認めたが、中村議員と同じく加森観光会長からの個人献金だったと主張。なお、加森観光会長は贈賄罪で在宅起訴されている。

 【2017年10月】

 第48回衆院議員選挙期間中(10月10日公示22日投開票)、紺野氏らは下地幹郎衆院議員(維新、比例九州沖縄=2020年1月8日に除名処分となり現無所属)と宮崎政久衆院議員(自民、比例九州沖縄)に100万円ずつ渡した。下地議員は選挙期間中に紺野氏から100万円を「陣中見舞い」として事務所職員が受領したことを認めたが、宮崎議員は自身も秘書も紺野氏らからの寄付を一切受領していないと強調している。


関係する企業が東京地検特捜部の家宅捜索を受け記者団から質問される秋元司衆議院議員=2019年12月、国会内(春名中撮影)
関係する企業が東京地検特捜部の家宅捜索を受け記者団から質問される秋元司衆議院議員=2019年12月、国会内(春名中撮影)
 報道によれば、秋元議員はこの他、2017年12月、500ドットコムが用意したプライベートジェットで中国深圳にある同社本社やマカオのカジノ施設などを訪問したが、この際の旅費(約150万円)を同社が負担していた疑いを持たれている。あわせて同年8月4日に同社が那覇市で主催したシンポジウムで、講演料として200万円を受け取ったとされる。