松沢直樹(フリーライター)

 2019年10月21日、厚生労働省は労働政策審議会の雇用環境・均等分科会において、職場のパワーハラスメント(パワハラ)防止の素案を示した。これまで労働基準法などをはじめとした労働関係法令で積極的に取り締まりを行ってこなかったパワハラ(職務上の権限を利用してのいやがらせ)について、具体的な規制の指針を示した形となる。

 ところが、肝心の素案に対して批判が集中した。とりわけパワハラに「該当しない」例に対して批判が集中し、日本労働弁護団をはじめとする団体は、使用者側が責任を逃れるための「弁解カタログ」と糾弾している。

 厚労省が提示したパワハラ規制についての素案が物議を醸す中、また新たな労働行政の穴が露呈した。いわゆる「就活セクハラ」問題である。

 2019年12月2日、東京大など複数の大学の女子学生などからなる有志団体が会見を開いた。会見の趣旨は、厚労省が意見募集しているハラスメント対策についてであった。

 有志団体によれば、就職を希望する企業にセクシュアルハラスメントの相談窓口があっても、相談することによって採用への道が閉ざされてしまう可能性を考えてしまうそうだ。その結果、多くの女子学生が、就活セクハラの被害を告発できない状態が続いているという。

 この会見は衝撃を与えた。「穴だらけ」と指摘されたパワハラ防止素案に続いて、ハラスメント対策をうたい、改正に至ったばかりの法律にも穴があったことが露呈したからである。
厚労省が公表したパワハラ指針の素案の見直しを求めて開かれた緊急集会=2019年10月、東京・永田町
厚労省が公表したパワハラ指針の素案の見直しを求めて開かれた緊急集会=2019年10月、東京・永田町
 2019年5月29日、参院本会議で女性の労働者をハラスメントから保護することを企業に義務付けた法律が可決、成立した。女性活躍・ハラスメント規制法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律)では、女性活躍推進法、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、労働者派遣法、育児介護休業法の5本を併せて改正した。

 これによって、企業は女性労働者に対し、業務上必要相当な範囲を超えた待遇を与えることが禁止された。これらの規制の中には、従来問題になっていたセクハラやマタニティーハラスメント(マタハラ・妊娠中の女性社員へのいやがらせ)についても不利益取り扱いの禁止が明文化されている。また、企業側に対する罰則についても明記されており、行政指導を行っても改善が見られない場合には、企業名を公表することとなった。