2020年01月28日 12:55 公開

米プロバスケットボールNBAのスーパースターだったコービー・ブライアントさんを含む9人が死亡した米カリフォルニア州でのヘリコプター墜落事故について、原因の調査が進められている。霧など気象の影響のほか、機体の故障の有無が注目されている。

ロサンゼルス西郊カラバサスで26日午前9時45分ごろに起きたヘリコプター墜落事故では、ブライアントさんとブライアントさんの13歳の次女ジアーナさんを含む乗員乗客9人全員が死亡した。

ロサンゼルス郡検視官は被害者の名前を公表していないが、遺族や同僚らによると、オレンジ・コースト・カレッジ野球チームのジョン・アルトベリ監督、妻ケリさん、ジアーナさんのチームメイトだった娘アリッサさんも犠牲になった。

さらに、ジアーナさんの学校のバスケットボール・チームの監督だったクリスティーナ・マウザーさんも同乗していたという。

米メディアによると、ジアーナさんのチームメイトだったペイトン・チェスターさんと母親のサラ・チェスターさんも犠牲になったほか、パイロットのアラ・ゾバヤンさんも死亡したという。

米国家運輸安全委員会(NTSB)によると、墜落機の型は「シコルスキーS-768」。NTSBは連邦航空局(FAA)や連邦捜査局(FBI)と共に27日、墜落現場や機体の製造業者などの調査を開始した。

事故当時の様子は

事故機が離陸した当時の天候は霧で、地元警察は警察ヘリの使用を取りやめていた。

現地紙ロサンゼルス・タイムズによると、事故機は26日午前9時過ぎにオレンジ郡ジョン・ウェイン空港を離陸。その約40分後に、丘が燃えているという通報があったという。

記者会見したNTSBのジェニファー・ホメンディ調査官によると、事故機のパイロットは墜落の数分前、航空管制官に連絡し、最適ではない気象条件で飛行するための特別許可を申請。許可を得るまで12分間、空中を旋回していたという。

パイロットはその後、衝突をさけるために管制官と常時連絡を取り続ける「フライト・フォロイング」を依頼したものの、管制官は機体の高度が低すぎると伝えた。

さらに数分後、操縦士は「雲の層を避けるために高度を上げる」と連絡。レーダー記録によると、上昇した後、左に旋回して下降を始めたが、「事故位置に合致する」形で通信が途絶えたという。

墜落現場では機体の破片が約150メートルの範囲で散乱。尾翼と主回転翼が胴体から離れており、「ひどい事故現場だった」とホメンディ調査官は話した。事故機にはフライトレコーダーの搭載義務がなく、レコーダーは使われていなかったという。

南カリフォルニア大学(USC)航空安全治安センターのトマス・アントニー所長はBBCに対して、雲が多い状況での飛行は視覚的インプットが少なく、パイロットは「空間識失調」を経験することがあると説明。「そのため人工的な地平線を表示してくれる計器を使う必要がある」という。

その一方で、墜落事故の原因は常に複合的で、「どういう要因の組み合わせがこの悲劇的な事故につながった」か、調査官たちは調べる必要があると、アントニー氏は話した。

さらに、S-76については「世界中で使われている高度に洗練された機種」で、ジェットエンジン2基の双発機のため、たとえ片方のエンジンが故障しても飛び続けられると述べた。

ブライアントさんはなぜヘリで移動

ブライアントさんは事故当時、小中学生の大会に出場する娘のバスケットボール・チームを指導するため、自ら主宰するマンバ・スポーツ・アカデミーの会場に向かっていた。

ロサンゼルスの交通渋滞を避けるために自家用ヘリを使うことが多く、この日はニューポート・ビーチ近くの自宅からサウザンド・オークスにある会場へ移動するはずだった。渋滞がなければ車で1時間余りの距離だが、渋滞すれば3時間以上かかることもある。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のマイケル・マンヴィル教授(交通専門)は、ロサンゼルスの交通渋滞がひどい理由として、混雑課金がないことと、「ロサンゼルスは人口も経済も都市化が進むのに、郊外のようなレイアウト」のため住民は運転しないわけにはいかないことを挙げる。

調査会社インリクスによると、ロサンゼルスのドライバーは2018年、渋滞によって平均128時間を失っている。


NBA史上最も偉大な選手の1人

ブライアントさんは、NBAロサンゼルス・レイカーズの主力選手として5回優勝。NBA史上最も偉大な選手の1人とされてきた。

ブライアントさんはNBAでプレーした20年間、一貫してレイカーズで活躍した後、2016年4月に引退した。2008年に最優秀選手(MVP)に選ばれ、NBAファイナルズのMVPにも2度選ばれた。NBA最多得点選手は2回。オリンピックでは2008年の北京五輪と2012年のロンドン五輪で、アメリカ代表チームの優勝に貢献した。

2006年にはトロント・ラプターズ相手に81得点を記録。これはNBA史上2番目の最多得点だった。

2018年には、「ディア・バスケットボール」という短編アニメ映画でアカデミー賞を受賞。これは、自分が2015年に書いたバスケットボールへのラブレターをもとにした作品だった。ブライアントさんと妻ヴァネッサさんの間には、ほかに娘が3人いる。

2003年にはコロラド州のリゾート地で働いていた19歳女性から、性的に暴行されたと告訴された。ブライアントさんは、合意の上での性行為で強制はなかったと反論。女性が法廷での証言を拒否したため、刑事訴追は取り下げられた。

ブライアントさんは後に謝罪し、「彼女がこの件を自分と同じように受け止めなかったし、受け止めていない」ことは理解すると述べた。双方の間には後に示談が成立している。

(英語記事 Kobe Bryant: Investigators work to determine cause of crash