2020年01月28日 15:48 公開

イギリスのボリス・ジョンソン首相は26日、欧州連合(EU)離脱後の2月から、科学者や数学者、研究者を優先するビザ(査証)を導入すると発表した。

政府が認可した研究機関に身元を保証され、かつ対象となる分野で研究を行っている科学者は、ブレグジット(イギリスのEU離脱)後に「グローバル・タレント・ビザ」の対象となる。

ジョンソン首相は、「イギリスは世界最高水準の才能に門戸を開いている」ことを強調したいと述べた。

一方、野党からはこのビザの効果を疑問視する声が上がっている。

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イギリスは1月31日にEUを離脱する。その後は11カ月間の移行期間に入り、EUとの間のさまざまな関係について合意を形成していく。

現在、イギリスで科学研究に従事している21万1000人のうち、EU出身者は約半分を占めている。

EU出身者はこれまで、イギリスの研究機関で働く際にビザを必要としていなかったが、2020年末に移行期間が終了した後は、イギリスとEUの間の人の自由な行き来が制限されると予想されている。

政府は、2021年1月からオーストラリア型のポイント制のビザシステムを導入するとしている。

「才能への投資と最先端の研究」

グローバル・タレント・ビザは2月20日に導入される予定。申請を迅速化するため、内務省ではなく、政府主導の研究を支援しているUKリサーチ・イノベーション(UKRI)が管理する。

これまでの研究者ビザは毎年、上限が2000人までとされていたが、グローバル・タレント・ビザは上限を設けていない。

また、入国時点で研究機関への採用が決まっていない場合でも、申請が可能だという。

ジョンソン首相は記者会見で、「イギリスは科学の発見において誇るべき歴史がある。しかし、この分野を主導し、未来の困難に立ち向かうには、才能への投資と最先端の研究が必要だ」と述べた。

「EUを離脱する今こそ、イギリスは世界最高水準の才能に門戸が開かれ、そのアイデアを実現するための支援をする準備ができていると、メッセージを発したい」

プリティ・パテル内相は、このビザは国内に世界水準の研究者を増やすための「決定的な政策」だと評価した。

「前向きなメッセージになる」

イギリス政府はグローバル・タレント・ビザの導入によって、イギリスを拠点とする研究プロジェクトに有能な科学者や数学者を採用できるようになると説明している。

これには、ブレグジットによりイギリスが国際的な研究プログラムに参加できなくなるという懸念に対する、暗黙の対策という側面もある。

イギリスの研究機関はかねて、EU離脱後の研究者流出を最小限に抑えるため、優先ビザを導入するよう政府に強く働きかけてきた。今回のグローバル・タレント・ビザ導入は、こうした活動の勝利とされている。

イギリス王立協会の会長を務めるサー・ヴェンキ・ラマクリシュナン教授は、優先ビザ導入を歓迎。世界中の有能な研究者や専門家が、キャリア段階を問わずに「魅力を感じる」ものだと評価した。

「イギリスがなお、国内の有能な科学者と協力してくれるような海外の才能に門戸を開いているという、前向きなメッセージを送っている」

「科学にとって良いことは、あらゆる人の利益になる。気候変動や病気といった深刻な問題に取り組む助けになる」

研究助成金、数十億ポンドの増額も

BBCは昨年、ジョンソン首相の上級顧問を務めるドミニク・カミングス氏が、EU離脱後の最優先事項の1つに科学を挙げていると報じた。

研究機関のトップらも、首相官邸でカミングス氏やクリス・スキッドモア科学相と会談し、研究助成金の増額分をどのように使うべきかを協議したと認めている。

研究助成金については、3月の来年度予算案で数十億ポンドの増額が予定されている。

野党は効果を疑問視

最大野党・労働党のチー・オンウラー影の産業戦略担当相は、「科学へのさらなる支援と認知は歓迎すべきだ」と述べた一方、政府の発表した政策は「イノベーションへの理解が足りていない」と指摘した。

「イノベーションはさまざまなレベルの科学者、研究者、エンジニア、技術者が関わるもので、少数の『最高水準の才能』だけでは成り立たない」

「エラスムス計画(EUの学生流動化計画)を終わらせ、アフリカやアジア出身の科学者へのビザを否定し、年俸3万ポンド(約420万円)という下限を設ける。これらはすべて、イギリスの科学の素地の豊かさと質に悪影響を及ぼす」

野党・自由民主党のクリスティーン・ジャーディーン内務報道官も、「ビザの名前を変え、上限を取り払うだけでは真面目な計画とはいえない」と批判した。

「科学は何千人もの研究者に支えられているが、今回の発表は、そうした研究者のほとんどに関係しない。政府が本当にイギリスの科学のために闘いたいなら、EUとの将来の関係において人の自由な行き来を最優先すべきだ」

(英語記事 PM unveils fast-track science visas after Brexit