小倉正男(経済ジャーナリスト)

 大阪高裁は30日、ふるさと納税をめぐる総務省と大阪府泉佐野市の争いに判断を下した。総務省は、ふるさと納税の新制度移行を契機に泉佐野市など4地方自治体をその対象から除外。泉佐野市はそれに異議を唱えて取り消しを求めていたが、高裁判決は泉佐野市の請求を棄却したのだ。これによって「泉佐野の乱」は、一応のところ総務省の勝利となった。

 「泉佐野の乱」という、国と地方の税をめぐる係争というのも珍しいケースだが、総務省と泉佐野市のどちらも一歩も引かないバトルである。世間が面白おかしく取り沙汰したのは、ふるさと納税という身近な問題だったためである。

 ふるさと納税の2018年度寄付額は5127億円。6年連続で過去最高を更新しており、18年度も前年度比40%の大幅増を記録している。

 寄付受け入れ額トップは泉佐野市497億円で全体の9・7%を占めた。全国1741地方自治体のなかで断トツである。2位は静岡県小山町250億円でこれも全体の4・9%。和歌山県高野町196億円、佐賀県みやき町168億円がそれに続く。19年6月からのふるさと納税新制度で総務省に除外された4自治体がそろって上位独占で「圧勝」となっている。この4自治体で合計1111億円、全体の21%強を占めているのだからすさまじい。

 「税」というのは、古代には稲で収めたことから「のぎへん」の漢字になったといわれる。税金というのは国、地方の「国のかたち」の基本骨格を決めるものであり、国、地方のおカネ(収入・財源)がからんでいる。

 ふるさと納税は、一般の税と違った際立った特徴がある。徴税というのは、徴税するサイドからすれば大きな既得権だ。徴税する側にとっては、法律に沿って粛々と徴税するわけである。納税するサイドは、税理士などを依頼することはあっても基本的には有無をいうことができない。

 だが、ふるさと納税は基本的には、国民である個人が自治体の提示する産品・サービスを選んで寄付して、その地方自治体から一定の産品・サービスの還付を受けるというものだ。

 個人からすれば納税する自治体が「自由化」され、個人に選択権が与えられている。自治体からすれば個人に選択されて初めて徴税権を持てる仕組みである。

 いわば、ふるさと納税には「選択の自由」が導入されている。限定はあるにしても、個人に自治体を選択できるという、有無を言える余地を持たせている。ここにふるさと納税の大きな特徴がある。

 ふるさと納税に導入された「選択の自由」は、国・総務省といった中央の既得権者からすると“パンドラの箱”を開けたことに等しい。

 そのパンドラの箱には、「マーケット原理」、あるいは「マーケット競争原理」が仕込まれているからだ。マーケット原理というものは権力側としては制御不可能なものだから、一般的には嫌いがちだ。
泉佐野市のふるさと納税のカタログ
泉佐野市のふるさと納税謝礼品カタログ=2016年2月8日
 ふるさと納税では、徴税=納税が「選択の自由」に任されるとすれば、徴税サイドは納税サイドに選んでもらうわけだから、そこに競争原理が働くことになる。いわば、マーケット原理に晒(さら)される。それだけにとどまらず、マーケット原理に支配される。

 自治体のなかには、納税サイドに選んでもらうために徹底して「企業努力」を行うところが出てきても不思議はない。商品やサービスをこれでもかと展示して巨大なバーチャルマーケットを形成する。