有田芳生(参院議員)

 本稿が掲載されるとき、京都市長選の結果はすでに明らかになっている。執筆時(1月30日)までに入手したメディアの世論調査をまず紹介しておく。

◎読売新聞(1月24~26日)門川大作47%、福山和人23%、村山祥栄14%。
◎共同通信・毎日新聞・京都新聞(25~26日)門川47%、福山19%、村山16%。
◎NHK期日前出口調査(27日までの累計)門川57%、福山32%、村山11%。


 ネット上では、現職の門川氏(公明、自民府連、立憲府連、国民府連、社民府連推薦)と福山氏(共産、れいわ推薦)の「接戦」「激戦」とされていた。世論調査が正確ならば、門川氏が再選を果たしているだろう。もし福山氏が勝利していれば、まさに大逆転である。

 冒頭で触れたように本稿執筆時に結果は出ていないので、勝者がだれかはさておき、京都市長選はもちろん、どんな選挙戦でも基本は政策論争にある。しかし、京都市長選に関してネットを中心に話題になったことは、地元紙である京都新聞の1月26日付朝刊に掲載された選挙広告であった。その広告には、京都の象徴である鴨川の写真の上にこんなキャッチコピーが踊っている。

 《大切な京都に共産党の市長は「NO」》。そして説明が続く。「京都はいま大きな岐路に立たされています。わたしたちの京都を共産党による独善的な市政に陥らせてはいけません。国や府との連携なしには京都の発展は望めません」。広告主は門川氏の選挙母体である「未来の京都をつくる会」だ。

 この広告には、地下鉄延伸、北陸新幹線延伸、文化庁本格移転といった政策も掲げられているが、強調している点は〈共産党の市長は「NO」〉である。これには二つの重要な問題がある。

 第一に、古典的で時代錯誤の「反共主義」が21世紀の今なお続いていることだ。反共主義とは、旧ソ連の全体主義などを想起させ、独裁や人権侵害が社会を覆うという根拠のないイメージを植え付けることを目的とする体系的なイデオロギーである。

 政策論争よりも否定的レッテルを一方的に貼りつけて拡散することで共産党が推薦する候補者への投票をためらわせることのみが狙いだ。

 戦後日本政治にあって、ソ連や中国の社会主義が大きな影響力を持っていた1950~80年代までは、しばしば使われた手法であるが、冷戦終結後にも有効であると判断する認識そのものが時代遅れである。
「京都に共産党の市長は『NO』」などと記載された門川大作氏陣営の選挙広告
「京都に共産党の市長は『NO』」などと記載された門川大作氏陣営の選挙広告
 特に京都は、旧社会党や共産党を与党とする蜷川虎三知事による民主的な府政が28年も続いた地域である。共産党が戦後ずっと強固な地盤を維持してきた歴史は、今も変わっていない。だからこそレッテル貼りの反共宣伝なのだろう。ただ、これは政治手法として、きわめて恥ずかしい。

 この広告について、共産党の小池晃書記局長は、ツイッターで「ヘイトだ」と批判した。それに対して共産党に好意的な政治学者が「ヘイト」と評価するのは間違いだと批判したように、捉え方は分かれた。この問題についても触れておきたい。