しかし、「中国離れ」、あるいは中国との距離の見直しが加速化できないところもある。国際機関に染み込んだ中国依存体質だ。

 今回の新型コロナウイルス問題では、SARSでの情報公開の遅れとそれに伴う世界的大流行(パンデミック)の出現と比較して、中国の政治体制に根付くより深刻なリスクが顕在化している。それが今書いた国際機関を中心とする中国依存体質、あるいは中国の指導部の顔色を忖度(そんたく)する国際的なリスクだ。これを「中国忖度リスク」と表現しよう。これには、国連への分担金が日本を抜き去り、世界第2位になった背景もあるだろう。

 フランスのル・モンド紙が、先月22、23日に開催された世界保健機関(WHO)の緊急委員会で、中国政府が新型コロナウイルスについて「緊急事態宣言」を出さないように政治的圧力を行使していた疑いを報じた。この圧力のためか、31日の緊急委後に出された「緊急事態宣言」は、渡航・貿易制限などに触れられていない抑制されたものになっている。

 だが各国政府は、この「緊急事態宣言」より踏み込んだ渡航や入国制限を実施している国が目立ってきている。WHOの「中国忖度リスク」に備えたかのようだ。

 この「中国忖度リスク」は、意外なところで日本にも迷惑を与えている。日本経済新聞の滝田洋一編集委員のツイッターで知ったのだが、WHOが「緊急事態宣言」を掲載したホームページでは、なぜか発生源の中国ではなく、成田空港の写真が現在でも使われている。

 実に奇怪な印象操作と言わざるを得ない。もし「操作」ではないとするならば、このような悪影響を諸外国に与えるイメージは即刻撤回すべきであろう。日本政府の対応が求められる。

 ところで、新型コロナウイルスの医学的な判断をこの論説で行うことはできない。筆者が参照にしたのは、感染専門医の忽那賢志(くつな・さとし)氏や、医師でジャーナリストの村中璃子氏の論考だ。特に村中氏は、日本政府がWHOや中国政府の発表を当初鵜呑みにした対応を問題視していた。

 評論家、石平氏の中国問題に対する見識も、筆者は常々参考にしている。最近のインタビューでは、「上海、深圳(シンセン)などハイテク産業が盛んな地域に広がる可能性もある。このまま主要都市の生産活動が3カ月もできなければ、GDPは数割減に落ち込む可能性もある」という極めて厳しい予測をコメントしている。
大幅に下落する上海総合指数のボード=2020年2月3日(萩原悠久人撮影)
大幅に下落する上海総合指数のボード=2020年2月3日(萩原悠久人撮影)
 実際のGDPの落ち込み予測はともかくとして、確かに上海や深圳にまで武漢同様の影響が波及すれば、中国経済の落ち込みは深刻なものになるだろう。いくつかの経済シナリオを頭の中に置きながら、今の世界経済、そして日本経済を読み解いていかなければならない。

 新型コロナウイルスの感染波及が全く見通せない中では、経済的には不確実性に備えた体制を採用するのが望ましい。日本であれば、政府と日本銀行が協調した経済拡大スタンスの採用を強くアナウンスすること、それに尽きるだろう。