2020年02月10日 14:58 公開

タイ東北部ナコンラチャシマ市で8日、男が銃を乱射し、29人が死亡、57人が負傷した。男はショッピングセンターに立てこもり、事件発生から16時間後の9日朝、治安部隊に射殺された。現場にいた市民らが、直面した恐怖を語った。

射殺されたのは、ジャカパン・トンマ容疑者(32)。首都バンコクから約250キロ離れた基地に所属する兵士だった。

トンマ容疑者は、ショッピングセンターに立てこもる前の8日午後3時半ごろ、基地で上官らを殺害した。陸軍関係者によると、軍の車両とライフル銃2丁とM60 機関銃、銃弾770発分を基地で奪った。その際、別の兵士1人を殺害した。

同容疑者はその後、空港を模した7階建てのショッピングセンター「ターミナル21」に移動。乱射を始めたという。


同容疑者は犯行中、画像をソーシャルメディアに投稿していた。

プラユット・チャンオチャ首相は、土地をめぐる争いが事件のきっかけと思われると述べた。

「頭を狙っていた」

ショッピングセンターでは、買い物客たちがトイレにバリケードを張ったり、テーブルの下に身を隠したりした。逃げるべきか隠れるべきかわからず、携帯電話で必死に情報を得ようとした。

そうしたなか、車の中にいた人や、ショッピングセンターの外にいた人など、多くの市民が犠牲となった。ソーシャルメディアには、当時の生々しい状況の画像が投稿された。


ある女性は、ショッピングセンターをちょうど車で出たときに銃声を耳にした。「建物からヒステリー状態で駆け出して来る」女性や、オートバイを乗り捨てて走って逃げる人を見たという。

現場に居合わせたという男性は地元テレビ局に、容疑者は「あらゆる方向に撃っていて、銃撃はとても正確だった」と話した。犠牲者たちの頭部を狙って撃っていたといい、男性の同僚も犠牲になったと話した。

トイレに逃げ込み封鎖

ショッピングセンターの4階では、男性(33)が十数人の人々と一緒に、女性用トイレに逃げ込んだ。人々は個室のドアを使ってトイレ入り口を封鎖したという。全員が携帯電話で情報を探ったが、あまりに多くの情報が出回り、何を信じていいかわからなかったという。

この男性はAFP通信に、「みんな恐怖を感じていた。ショッピングセンターで働く友達が、館内の映像が見られる警備室に電話した(中略)銃を持った男がどこにいるのか、彼が最新情報をくれた」と話した。

午後9時ごろに警官隊が到着すると、男性らは落ち着いてトイレから出た。しかし、銃声が鳴り響いたため、駆け出したという。


事件のあったナコンラチャシマ市に住む英語教師チャーリー・クロウソンさんはBBCに、同市はふだん平和だが、この日は「路上に死体」があったと述べた。彼のガールフレンドの元生徒も死亡したという。

9日に開かれた追悼集会では、13歳の少女が、母親と一緒にショッピングセンターのトイレに5時間追いやられたと語った。

少女は追悼の寄せ書きに、「他の人を生き残らせるために犠牲となった人たちに感謝します。あなたたちがいなければ、私たちは今日ここにいません」と記した。

射撃の名手

プラユット首相は、トンマ容疑者と軍の上官の親戚との間で、家の取引に関して紛争が起きていたもようだと述べた。同容疑者はこの上官と親戚の2人共を基地で殺害したという。

プラユット氏は、「これが唯一で最後の事件であり、二度と起こらないことを望んでいる。誰もこんなことが起きてほしいと思わない。たまたまこの時期に、この人物の精神衛生のために起きたのではないか」と述べた。


軍関係者によると、トンマ容疑者は射撃の名手で、待ち伏せなどを含め襲撃についての研修を受けていたという。

同容疑者はソーシャルメディアを多用し、武器と一緒に写った自らの写真などを投稿していた。


事件前にはフェイスブックに、「ずるをして金持ちになった。他の人を利用した。その金を地獄で使えると思っているだろうか?」と投稿していた。

事件の最中には、「全員、死は免れない」と投稿した(フェイスブックは後にこれを削除した)。

(英語記事 'He aimed at the heads': Survivors recall shooting