川上祐司(帝京大経済学部教授)

 「この前、公園でキャッチボールをやっていたら、近くにいた人に『危ないから止めなさい』って注意されちゃった」
 「それは、『ボール遊び禁止』の公園だったからでしょ」
 「でも、ボール遊びが禁止でない公園なんてあるのかな?」

 政治、経済の中枢機能が集中する東京都千代田区では、2013年4月から「千代田区子どもの遊び場に関する基本条例」が施行されている。冒頭のやりとりは、条例の前文に記されている区内小学生の会話だ。

 第1条には「子どもが外でのびのびと遊ぶことができる環境づくりに協力し、もって子どもの体力及び運動能力の向上並びに健やかな育成を図る」と目的が掲げられている。同区内の公園や施設では、時間と場所は限定されるものの、ボール遊びが自由にできる「子どもの遊び場事業」を進めている。昨年末、スポーツ庁の調査で分かった小学生の体力低下への対応につながっている。

 筆者が少年期を過ごした1970年代は、ボールとバットさえあれば「どこでも」野球で遊べた時代であり、周囲も少々のことは目をつぶってくれていた。巨人戦のテレビ中継や野球マンガ、アニメには、大人から子供までくぎ付けになった。

 今思えば、巨人の底知れぬ強さが庶民の生活を豊かに彩っていたのかもしれない。しかし、その憧れだったプロ野球は、今も親会社の経営手段としてのビジネスモデルに大きな変化は見られない。

 その理由は、昭和29年8月に国税庁が出した「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について」という通達にある。これにより、職業野球団(プロ野球球団)に対して親会社が球団に支出した広告宣伝費、また球団が出した赤字を補塡(ほてん)しても親会社の経費とすることができ、球団に対し支出した賃付金までも損金にできるため、実質上は親会社の節税にも寄与しているのである。年々上昇する選手年俸はサラリーキャップ(年俸上限)制度のない日本野球機構(NPB)のチーム経営の行方を左右する。

 この特権が与えられたNPBの球団数は今もセ・リーグとパ・リーグそれぞれ6球団、計12のままだ。2019年シーズンのセ・リーグの総観客動員数は約1490万人、1試合平均では約3万4700人、一方、パ・リーグは約1170万人で1試合平均約2万7千人になる。
東京・千代田区がキャッチボールなどが可能な場所を設けるための実証実験で、ボール遊びなどで遊ぶ子供たち=区立和泉公園
東京・千代田区がキャッチボールなどが可能な場所を設けるための実証実験で、ボール遊びなどで遊ぶ子供たち=区立和泉公園
 これまで、不動の巨人人気に支えられてきたセ・リーグだったが、パ・リーグとの差は年々縮まっている。実はNPBの年間観客数、約2600万人は米大リーグ機構(MLB)の約6800万人に次ぐ、世界2位の集客を誇るプロスポーツリーグである。

 MLBでは各30球団、レギュラーシーズンでそれぞれ162試合を行うから、その数字になるのもうなずける。とはいえ、2季連続で7千万人を下回り、観客数減少が取り沙汰されているものの、リーグ全体の収益は飛躍的に拡大している。そこには日米プロスポーツリーグの経営手法に大きな違いがある。