ただ、かすかな光明は、株価が大きく下落し続けないことと、また為替レートの円安傾向が定着していることである。ここで言う「円安」は単に金融緩和継続のシグナルと考えていい。これらが企業業績の悪化を何とか食い止めている。

 だが、賢明な読者ならばお気づきであろうが、今まで解説したことは、年明けからの新型コロナウイルスの感染拡大による経済ショックを全く考慮に入れていないのだ。それが先に指摘した最悪のシナリオにつながる。

 新型コロナウイルスへの政府の対応は「後手」だとの批判が多い。「国内発生の早期」段階という政府発表を前提にすれば、私見では、今後どのように本格的流行のピークを低くし、早期終息するかがポイントになってくる。

 この点はどうなるのか、専門家も十分予測できていない。経済への影響も短期的に終わるか、あるいは長期化するか、全く予断を許さない。

 嘉悦大の高橋洋一教授は、国の直接の財政支出であり、国民の購買力に直接寄与する「真水」で数兆円規模の第2次補正予算を編成することを主張している。筆者も高橋氏の主張に賛成だ。これらの政策がうまくいかなければ、アベノミクスの最大の成果である雇用改善がやはり損なわれていく可能性がある。

 ちなみに、前回の消費増税が雇用に与えた悪影響をおさらいしておこう。安倍政権が発足した12年12月の完全失業率は4・3%だった。それ以降、消費税率が8%に引き上げられた14年4月には3・6%と、0・7ポイント改善していた。
嘉悦大の高橋洋一教授=2018年3月(宮崎瑞穂撮影)
嘉悦大の高橋洋一教授=2018年3月(宮崎瑞穂撮影)
 だが、増税以降、失業率の低下スピードは衰える。同じ0・7ポイント低下するまでに、約3年を要してしまった。

 ところが、さらに0・5ポイント低下するのに、17年2月から18年10月までの1年半しかかかっていない。失業率は改善が進むほどに低下スピードが衰えるはずだが、それよりも後の時期の改善スピードよりも極めて遅かったことで、消費増税が雇用にも深刻な影響を与えていたことが分かる。