酒井政人(スポーツライター)

 マラソンの東京五輪代表争いがクライマックスを迎えようとしている。男子はマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で2位以内に入った中村匠吾(富士通)と服部勇馬(トヨタ自動車)の代表が内定。3位の大迫傑(すぐる、ナイキ)はMGCファイナルチャレンジで日本陸連の設定記録を突破する選手がいなければ代表内定となる。

 大迫は自ら五輪チケットを奪いに行くべきか。それとも、果報を待つべきか。日本記録保持者の動向が注目されていた。

 そのような中で、大迫は3月1日の東京マラソンにエントリーした。最後の1枠は「東京決着」の予感が漂ってきた。

 MGCファイナルチャレンジで日本陸連が定めた設定記録は大迫が保持する日本記録を1秒上回る2時間5分49秒。冷静に考えると、この記録を上回るのは簡単ではない。日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは「私が大迫の立場なら出ない」と話すほどだ。

 男子のMGCファイナルチャレンジは、昨年12月の福岡国際、3月1日の東京、同8日のびわ湖毎日の3レースが指定されている。福岡国際は、日本人トップ(2位)の藤本拓(トヨタ自動車)のタイムが2時間9分36秒で、条件を満たすことができなかった。びわ湖は、大会記録が2時間6分13秒で、前回の優勝タイムが2時間7分53秒。設定記録に届く可能性は極めて低い。

 チャンスがあるとすれば、高速コースの東京しかない。大会記録は2時間3分58秒で、3年連続して設定記録を上回るランナーが出現。2年前の大会では設楽悠太(ホンダ)が2時間6分11秒の日本記録(当時)、井上大仁(ひろと、MHPS)も2時間6分54秒をマークしている。
MGC男子、スタートする(左列手前から)大迫傑、設楽悠太ら=2019年9月(川口良介撮影)
MGC男子、スタートする(左列手前から)大迫傑、設楽悠太ら=2019年9月(川口良介撮影)
 大迫が東京に参戦するのは「賢者の選択」といえるだろう。まずはメンタル面。自分が出場しないレースで誰かが設定記録をクリアした場合、後悔することになるが、同一レースを走って負けたとなれば、納得の結果となる。