2020年02月29日 11:12 公開

イギリスで28日、渡航歴のない男性の国内感染が初めて確認された。同日には、客船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客で日本国内で入院していた英国籍の男性が死亡。新型ウイルスによるイギリス人の最初の死者となった。

イギリス政府の医療トップ、イングランド医務主任(CMO)のクリス・ウィッティー教授は、英南部サリー州で海外渡航歴のない男性が新型コロナウイルスに感染していることが分かったと明らかにした。イギリス国内での感染例は初めて。男性が最近、帰国者と接触したかは不明で、医療当局は感染経路の特定を急いでいる。

男性はロンドン中心部のガイズ・アンド・セントトマス病院に移送され、感染症特別センターで治療を受けているという。男性が診察を受けたサリー州ハスルミア健康センターは、「徹底洗浄」のために28日午前から一時閉鎖している。

同日には、横浜港に停泊するダイヤモンド・プリンセスの乗客だった70代のイギリス人男性が、日本の病院で死亡したことが明らかになった。新型コロナウイルスでイギリス人が死亡するのは、これが初めて。男性はイギリス国外在住だった。ダイヤモンド・プリンセスの乗客が死亡するのは6人目。

死亡した男性と、サリー州での感染者を合わせて、イギリス人の感染者は計20人になった。

死亡した男性乗客について、ボリス・ジョンソン英首相と英外務省報道官はそれぞれ、男性と遺族に追悼の意を示した。

ダイヤモンド・プリンセスを運行する米プリンセス・クルーズ社も、男性に「心からのお悔やみ」を表明した。

感染経路の特定作業開始

サリー州で新型ウイルス陽性が確認された男性について英保健省は、感染はイギリス国内で起きたものだが、感染源は「はっきりしない」と説明。「ただちに特定できる」海外渡航とのつながりが見当たらないとしている。

保健省の公衆衛生執行機関、パブリック・ヘルス・イングランド(PHE)は、サリー州の行政機関と協力し、男性と濃厚接触した人たちに連絡をとっていると明らかにした。

英ノッティンガム大学のジョナサン・ボール教授(ウイルス学)は、国内での感染確認は「イギリスにとって新しい段階」だと述べ、感染源の特定が「不可欠」だと強調した。

「かねてから懸念されていたことだ。このウイルスは軽いインフルエンザや風邪によく似た症状の原因となることが多く、人から人へ簡単にうつる。それだけに気づかれにくい」と教授は説明する。

ジョンソン首相「手を20秒以上洗うように」

ジョンソン首相は同日夜、首相官邸から新型コロナウイルスについて発言し、横浜で亡くなったイギリス人男性の遺族に追悼の意を示した。

国民の不安にどう応えるか質問されると、国民健康サービス(NHS)があらゆる準備を重ねていると強調。さらに、協議したばかりだというウィッティーCMOの助言を繰り返すとして、ウイルスの感染拡大を防ぐため一番良いのは「お湯とせっけんで手を20秒以上洗うことだ」と述べた。

首相はさらに、国内での集団感染発生に備えることが目下、政府にとって「最優先課題」で、2日にも緊急治安特別閣議(コブラ=COBRA)を開く予定だと話した。

ダイヤモンド・プリンセスのイギリス人乗客について、政府はもっと早く対応して国民を帰国させるべきではなかったかとの質問も出た。首相は、乗客がイギリスにウイルスを持ち帰らないことが確認されるまでは帰国させない方が良いという「最高レベルの専門家の助言」に従っていたのだと説明。NHSの準備態勢について、医療当局幹部と打ち合わせを重ね、現場を視察していたのだと述べた。

最大野党・労働党は、ジョンソン首相が2日までCOBRA緊急閣議を開かないことなど、政府対応の遅れを批判している。労働党のジョナサン・アンズワース影の保健相は、首相の新型ウイルス対策はまったく不十分だとして、「職務に集中していない、まるでパートタイムの首相のようだ」と述べた。


海外で感染し帰国する人も

英保健省によると、イランで新型ウイルスに感染した人が2人、イングランドで確認された。

西部ウェールズでは、イタリア北部で感染したと思われる人を確認し、濃厚接触の相手を追跡しているという。

北アイルランド当局も28日、初の感染者を確認。イタリア北部からアイルランド・ダブリンへ向かう機内で、この女性の近くに座っていた他の乗客たちにはすでに連絡をとっているという。

世界保健機関(WHO)は28日、新型ウイルスによる感染者が増え続け、感染が確認される国も増え続けていることから、世界的リスクの判断を「非常に高い」に引き上げた

WHO健康危機管理プログラム責任者のマイク・ライアン博士は記者会見で、現在のデータからは新型ウイルスのパンデミック(世界的流行)が発生したとは言えないと強調した。

「コロナウイルスのパンデミックが起きていると言うのは、地球上のすべての人が(ウイルスに)さらされると実質的に認めるときだ」とライアン博士は話した。

「現在のデータはまだそれを示していない。対策を打てばパンデミックが必ずしも自然な結末ではないことは、中国の状況からはっきりしている」



<解説> どこで感染したのか――ジェイムズ・ギャラガー、BBC健康科学担当編集委員

この男性は、どこでウイルスに感染したのか。

イギリス人として20人目になった感染者について、この疑問の答えを早急に見つける必要がある。

今のところ、感染者の出た外国への渡航者と接触した形跡は見つかっていない。

その答えが分かるまで、国内初の感染者発見がどれほどの重大事なのか、判断しにくい。

単なる「2人の集団感染」の可能性もある。まだ特定されていないもう1人、海外で新型ウイルスに感染した人物と、この男性の2人だけの。

あるいは、さらに大規模な集団感染の最初の症例なのだろうか。それもあり得るのは確認済みだ。イタリアの専門家たちは、最初の症例が確認されるまで何週間も前から、気づかれないままウイルスは国内を移動していはずだとみている。

今のところ、真相は分からない。しかし、保健当局は以前から、このシナリオに備えて態勢を整えてきた。


(英語記事 Coronavirus: Latest patient was first to be infected in UK / Coronavirus: British man who was on Diamond Princess ship dies in Japan