2020年03月04日 9:34 公開

米大統領選挙の民主党候補者を決めるための投票が3日、テキサスやカリフォルニアなど14州で一斉に行われた。「スーパー・チューズデー」と呼ばれるこの投票で、ジョー・バイデン前副大統領は10州で勝利。支持率低迷で撤退もうわさされていた先週までの劣勢から、大々的なカムバックを果たした。このため民主党の候補争いは、バイデン氏と左派バーニー・サンダース上院議員との一騎打ちの様相になってきた。

今年11月の本選で誰がドナルド・トランプ大統領と争うのかを決める、民主党の予備選では、各候補が各州の代議員を獲得しようと競い合う。

代議員は夏の全国党大会に出席し、党候補を投票で決める。いま行われている予備選では、この代議員が党大会でどの候補に投票するかを、党支持者が決める。各州の代議員は得票率15%以上の候補に、得票率に応じて割り振られる。

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今年7月の民主党全国党大会で党候補に指名されるには、候補は1991人の誓約代議員(予備選結果に忠実に党大会で投票する代議員、一般代議員)を獲得しなくてはならない。スーパー・チューズデーでは、1357人もの誓約代議員の配分先が決まる。

BBCがアメリカで提携するCBSニュースによると、スーパー・チューズデーの結果を受けて、バイデン氏は584人の代議員を獲得する見通し。サンダース氏は509人になるという。

バイデン氏好調

CBSニュースの出口調査によると、中道派バイデン前副大統領はヴァージニア州(誓約代議員99人)、ノースカロライナ州(同110人)、アラバマ州(同52人)、ミネソタ州(同75人)、テネシー州(同64人)、アーカンソー州(同31人)、メイン州(同24人)、オクラホマ州(同37人)で勝った。オクラホマ州は、2日に選挙戦から撤退しバイデン氏支持を表明したクロブシャー上院議員の地元。

さらに東部マサチューセッツ州(同91人)でもバイデン氏が勝った。同州地元のウォーレン上院議員は3位にとどまり、大打撃を受けることになった。

大票田テキサス州(同228人)でもバイデン氏が勝利。同氏は投票前日の最後の集会を同州ダラスで開き、同州で人気のオローク前下院議員などの支持を取り付けていた。

左派サンダース氏は地元ヴァーモント州(同16人)、コロラド州(同67人)、ユタ州(同29人)で勝った。

最終的に代議員が各候補にどう割り振られるかは、得票率による。

大票田カリフォルニア州(同415人)では、サンダース氏が優勢。バイデン氏も健闘し2位につける見通しとなっている。

バイデン氏「良い夜だ」

ロサンゼルスで演説したバイデン氏は、「良い夜だし、ますます良くなる」とあいさつし、格差解消の重要性を強調。「この国を作ったのはウォール街じゃない、皆さんだ、労働者だ、労組だ」と訴えた。

「何の理由もなく、この日をスーパー・チューズデーとは呼ばない。(中略)皆さん、これを言うにはまだ早いが、状況はものすごく、ものすごく順調だ」と述べ、メディアが数日前に自分の敗北を報じたのは時期尚早だったと主張した。

そして、「まあ、終わりなのは他の男かもしれない」と述べ、ライバルのサンダース氏を遠まわしに攻撃した。

さらに、「間違いなく我々のこの選挙運動が、ドナルド・トランプを追い出す」と宣言した。

バイデン陣営は今年に入りアイオワ、ニューハンプシャー、ネヴァダの3州の予備選で苦戦し、支持率も選挙資金も低迷したが、サウスカロライナ予備選での圧勝を受け、民主党穏健派の支持を次々に確保。スーパー・チューズデーでは特にアフリカ系アメリカ人や中高年の支持を確保しているもよう。

これに対してサンダース氏は、若年層やヒスパニック系の支持を受けている。ただし、ヒスパニック系の多いテキサス州ではバイデン氏が勝つ見通しになった。

サンダース氏「古臭い政治ではトランプを倒せない」

サンダース氏は地元ヴァーモント州バーリントンで、支持者の前に笑顔で登場。「誰もがこれは成し遂げられないことだと言っていた。(中略)しかし今夜、私は絶対的な自信を持ってあなた方にこう伝えたい。我々は、民主党候補者争いに勝利するだろうと。そして、この国の歴史上最も危険な大統領を打ち負かすだろう」と述べた。

また、「この選挙運動が他に類を見ないものになっているのは、我々が事業者やウォール街の強欲、保険会社の強欲と対決しているからだ。そして、気候変動の実在的な危機を考えると、我々は化石燃料業界に言いたい。我々の国や世界の未来の前に、あなたたちの目先の利益など重要ではないと 」と述べた。

演説中、支持者はたびたび「バーニー、バーニー」と連呼した。

サンダース氏は、国民皆保険は人権だ、現状のような経済格差は認められないと従来の主張を繰り返し、「トランプを倒す可能性が最も高いのは自分たちの運動だ。古臭い政治ではトランプを倒せない」と強調した。

ブルームバーグ前ニューヨーク市長は、今回初めて予備選に参加。50万ドル以上の自己資金を対象の14州で選挙広告などに投下してきたが、米領サモア以外では勝てなかった。4日朝には、選挙戦からの撤退を表明し、今後はバイデン氏を応援すると述べた。

民主党穏健派がバイデン氏支持で結束

3日のスーパー・チューズデーを目前に、中道系の候補が相次いで撤退へと動いた。

ピート・ブタジェッジ前インディアナ州サウスベンド市長(38)が1日に選挙戦からの離脱を表明したのに続き、エイミー・クロブシャー上院議員(ミネソタ州)も2日、撤退を表明した。

両者は2日夜にテキサス州ダラスで開かれるバイデン氏の集会に参加し、同氏への支持を表明した。

同じ集会には、テキサス州で人気の高いベト・オローク前下院議員も参加し、自分はテキサスの予備選でバイデン氏に入れるつもりだと述べた。オローク氏は昨年11月まで、民主党の候補争いに出馬していた。同州は人口が多く、候補選びで影響力が強い。

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これまでバイデン氏と候補指名を争っていた3人の動きは、民主党内の穏健派が有権者たちの支持をバイデン氏に集中させ、代議員獲得数でトップを行く急進的なサンダース氏の独走を阻もうとする意向を反映したものとみられる。

バラク・オバマ前大統領の国家安全保障問題担当補佐官だったスーザン・ライス氏も2日、バイデン氏への支持を表明。民主党のマーク・ウダル、タミー・ダックワース両上院議員やハリー・リード前上院院内総務もこの動きに加わった。

危機的状況にあるのは?

民主党は岐路に立たされている。誰を選べば、今秋にトランプ氏の再選を阻止する可能性が一番高いか、支持者は選ばなくてはならない。

民主党の候補争いは一時、20人以上が出馬して実ににぎやかだった。大勢の女性や有色人の候補者が顔を並べ、民主党らしいと評判だった。しかし今後は、70代の白人男性2人の一騎打ちになりそうだ。

バラク・オバマ前政権の副大統領だった穏健派のバイデン氏と、燃えるリベラル活動家サンダース氏は、アメリカの未来について大きく異なるビジョンを提示している。

バイデン氏は、自分はアメリカに徐々に変化をもたらし、トランプ政権後の国の「品位」を回復すると主張。有権者の信頼を得やすい、現実的な候補だとアピールする。

しかし、バイデン氏の選挙運動は盛り上がりを欠き、あまりパッとしないという批判がある。ワシントン政界の実力者としての経歴も長いことから、よけいなお荷物もたくさん引きずっているとも言われている。

これに対してサンダース氏については、社会民主主義者を自認する候補ではホワイトハウス奪還に必要な浮動票を説得できないという批判がある。

78歳のサンダース氏は、数兆ドル分の増税によって国民皆保険や公立大学の無償化、学生ローンの帳消しなどを実現し、アメリカ経済を「革命的」に一変させる方針だ。

スーパー・チューズデーはなぜ重要?

すべては、代議員をどれだけ獲得できるにかかっている。代議員とは7月の民主党全国党大会で、各州の党員の代わりに党の候補を投票で選ぶ役割の人たちだ。

各候補は各州の予備選や党員集会で、得票に応じて代議員が割り当てられる。

今年の民主党代議員の総数は4750人。そのうち3979人が州ごとに割り当てられており、州の予備選の結果に沿って、党大会で投票しなくてはならない。3979人のうち1991人を獲得した候補が、指名獲得を確実にする。

(党大会の最初の投票でその人数を得る候補がいなければ、党幹部・重鎮がなるいわゆる「スーパー代議員」が投票に参加する)

つまり、各州の予備選や党員集会で最も多い代議員を獲得した人が、党の候補に指名される仕組みで、だからこそ民主党支持者の約3割が14州で一斉に投票する「スーパー・チューズデー」が注目される。

これまで4州の予備選・党員集会で配分がすでに決まった代議員は、まだ155人のみ。これに対してスーパー・チューズデーでは、実に1357人もの代議員の配分先が決まる。

なかでも代議員の人数が多いのは、人口の多いカリフォルニア州とテキサス州。カリフォルニア州は今回初めて、スーパー・チューズデーに参加する。

(英語記事 Super Tuesday: Millions vote to choose Trump rival