このように分析していくと、楽観シナリオから不確実性シナリオへ移行してしまったのではないか。このことは、他の経済指標からも確認できそうだ。日銀の次期政策委員であるエコノミストの安達誠司氏は近著『消費税10%後の日本経済』の中で、経済の局面の大きな転換を「リスクオフ」局面として描いている。安達氏が「リスクオフ」局面とした特徴は、次の5点である。

(1)株価の急激な下落
(2)国債(特に国際的に信用度が高い米国債)の利回りの急低下
(3)「逃避資産」としての性格をもつ「金(ゴールド)」価格の上昇
(4)「VIX指数」に代表されるようなボラティリティー(価格変動の度合い)指数の急上昇
(5)円高、およびスイスフラン高の進行


 それでは、5項目に関する現時点の状況を見ていこう。ダウ平均株価は2月24~28日の間続落し、12%超の週間下落率はリーマン・ショック以来の下落幅だった。

 しかし、週明けには一転して前週末比1293・96ドル高の記録的な上げ幅となったが、現状は再び大きく下落してしまった。日経平均や各国の株価指数も急激な下落を経験している。

 10年物米国債の利回りも低下トレンドにある。金価格も現状では下落傾向を見せていた。「逃避資産」としては不思議だが、安全志向が強く出すぎて現金保有や国債保有に偏ったせいか、もしくは最近までの金価格下落の調整局面かもしれない。

 VIX指数は「恐怖指数」ともいわれ、これは投資家の先行きに対する懸念の度合いを示すものだ。数値が高いほど投資に対する「恐怖」が大きい。
VIX指数(出典:FREDから作成)
VIX指数(出典:FREDから作成)
 恐怖指数の水準は、リーマン・ショックほどではないが、2011年のギリシャ危機までには高まっている。円高、スイスフラン高も進行中である。これらの経済指標から、従来の楽観シナリオが崩壊し、不確実な経済シナリオへの移行が真実味を増している。

 そうなれば、焦点となるのは、その新しい事態(レジームの悪い方向への転換)に対応した政策は何か、ということになる。

 金融政策と財政政策の協調的な拡大政策が必要なのは自明である。日本に限定して言及すれば、今までにない「劇薬政策」が必要だ。といっても、この「劇薬」は最近コメントした「夕刊フジ」の記事見出しを援用したものだ。個人的には、劇薬でも何でもなく、日本経済の現状に適合した政策にしか過ぎないと考えている。
2020年2月、リヤドでのG20閉幕後に記者会見する麻生財務相(左)と、日銀の黒田総裁(共同)
2020年2月、リヤドでのG20閉幕後に記者会見する麻生財務相(左)と、日銀の黒田総裁(共同)
 過去の連載でも既に提起したが、新型コロナウイルスの経済に与える影響を「2019年10月の消費増税」並みと考えれば、補正予算ベースで少なくとも6兆円、可能であれば10兆円が必要となる。