2020年03月05日 11:52 公開

4月3日にイギリス公開が予定されていた新しいジェイムズ・ボンド映画「ノー・タイム・トゥ・ダイ」の公開が、新型コロナウイルスへの懸念に対応するため、今年11月に延期された。製作者たちは4日、「慎重に検討し、世界的な映画劇場市場を徹底的に精査した結果」、延期を決めたと発表した。これに先立ち、大手ファンサイトなどが映画会社や製作者たちに公開延期を求めていた。

「ノー・タイム・トゥ・ダイ」は、主演ダニエル・クレイグさんがイギリス情報部員ジェイムズ・ボンドを演じる最後の作品となる予定。3月31日にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで、キャストやスタッフ、大勢のファンが集まる華やかなプレミアイベントを開いた後、4月にイギリスを皮切りに世界各地で次々と公開される予定だった。

ボンド映画の公式ツイッターアカウントは4日、「MGM、ユニバーサル、およびボンド製作者マイケル・G・ウイルソンとバーバラ・ブロッコリは本日、慎重に検討し、世界的な映画劇場市場を徹底的に精査した結果、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開を2020年11月まで延期すると発表しました」とツイートした。

https://twitter.com/007/status/1235248760260874241


これによって、イギリスの公開は11月12日、アメリカの公開は11月25日に変更された。

新作ボンド映画の公開時期については、2つの大手ファンサイトの創設者が公開書簡で、延期を呼びかけていた。

「MI6 Confidential」と「The James Bond Dossier」という2つのファンサイトの創設者たちは、「症状を示してさえいないたった1人が、観客全員に感染させるかもしれない」だけに、「そんなパブリシティーは誰も望んでいない」と指摘。「マーケティングのスケジュールやPRイベントの中止コストより、公衆衛生を優先させるべき時」だとして、公開延期を求めていた。

「世界中のファンと家族の健康の方が映画よりも大事だ」とファンサイトは書き、「みんなこの映画を4年以上も待ち続けた。もう数カ月待ったからといって、映画の価値が下がるわけではないし、ダニエル・クレイグの最後の万歳における興行収入はむしろ増えるはずだ」と力説した。

イギリスでは4日、新型ウイルスの感染者が一気に36人増え、計87人になった。ほとんどの感染者は感染多発地域への渡航歴があったり、渡航した人との接触があったりしたが、新しく確認された36人のうち3人については、感染経路が確認できていない。

イギリスでは現在、コンサートや大規模集会の開催は規制されていない。

一方でフランス政府は、2月29日から5000人以上が集まる集会を禁止。スイス政府は3月15日まで、1000人以上が集まる集会を禁止した。

夏休み映画にも影響か

新型コロナウイルスへの感染拡大が原因で、すでに様々なイベントが世界各地で中止あるいは延期されているが、世界的に公開される大作映画が新型ウイルスを理由に公開を延期するのはこれが初めて。

映画業界の米専門誌ハリウッド・リポーターのマシュー・ベローニ編集長は、「とても金のかかる、重大な動きだ。ハリウッドの夏の大作映画がどうなるかの予兆だ」と書いた。

英映画業界誌スクリーン・インターナショナルのルイーズ・タット副編集長はBBCニュースに、「経済的リスクを軽減する」ための決定だろうと話した。

「世界中で映画館が休館すると見越しての措置だと思う。中国ではすでにほとんどの映画館が閉じているので、たとえほかのどこでも1つも映画館が閉じなかったとしても、今年のアメリカ映画市場で最高額の興行収入が期待される新作が、予定通り公開していれば世界2番目の大市場を失うことになった」

ボンド映画の前作「スペクター」は2015年、世界中で9億ドル近い興行収入をあげている。

映画業界アナリストの中には、新型コロナウイルスの影響ですでに中国が映画館を閉鎖し、感染者が多発している韓国とイタリアでもすでに収入が打撃を受けていることから、新型ウイルスによって世界全体の興行収入は50億ドル減の打撃を受けるという意見もある。

https://youtu.be/BIhNsAtPbPI


ボンド映画シリーズ25作目の「ノー・タイム・トゥ・ダイ」の公開は、当初のダニー・ボイル監督が降板したため、すでに昨年10月から今年4月に延期されていた。

4月に予定されていた北京プレミアと中国のPRツアーは、2月の時点で中止が発表された。

中国では新型コロナの感染拡大を受けて、古代中国を舞台にしたディズニーの実写映画「ムーラン」や、パラマウント配給の「ソニック・ザ・ムービー」の公開が延期された。

ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメントは4日、「とりわけ慎重に対応」するための措置として、ロンドンとパリ、ポーランドの事務所を一時閉鎖した。

ディズニーは5日にロンドンで、動画配信サービス「Disney+」のイギリス立ち上げをお披露目するレッドカーペット・イベントを予定していたが、これをキャンセルした。

仏カンヌで3月末から予定されていた国際映像コンテンツ見本市(MIPTV)も中止になった。

(英語記事 Release of James Bond film No Time To Die delayed amid coronavirus fears / Coronavirus: Cases in UK jump to 87