それが、関東大震災を引き起こした関東地震(1923年、M7・9)以来、一転して首都圏直下の地震が不思議に少ない状態が続いてきた。以後1世紀もの間に、東京・千代田区で震度5を記録したのは4回しかない。

 しかも、そのうち2回は大きい震度だったが、首都圏直下ではなく、2011年の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震、M9・0)と2014年5月の伊豆大島近海の深発地震(M6・0)だった。

 関東地震以後、なぜ首都圏の地震が少ないか、学問的には分かっていない。しかし、関東地震の「一つ先代」である元禄(げんろく)関東地震(1703年)の後も、約70年間、江戸の地震は少なかった。ひょっとしたら、海溝型の大地震が起きた後、しばらくは首都圏の地震が少なくなる理由があるのかもしれない。

 首都圏では、この静かな状態がいつまでも続くことはありえない。東日本大震災後、首都圏は約90年間の静穏期間が終わり、いわば「普通の」、つまり今までよりは活発な地震活動に戻ると考えるのが地球物理学的には自然である。

 そのような中で、首都圏の地震が最近増えている。日本のどこでも起きる直下型地震のほか、海溝型地震も陸の下で起きるという「地震が起きる理由」が多い首都圏だが、関東で震度4以上の地震は2017年から2018年で倍増している。

 じわじわ地震が増えているのは首都圏だけではない。これは東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)が日本列島の地下にある基盤岩を東南方向に大きく動かしてしまったからだ。

 正確な測定には衛星利用測位システム(GPS)を使うので、陸上部だけの測定しかできていないが、宮城県の牡鹿(おじか)半島では5・4メートルずれた。遠くに行くにしたがって小さくなるが、首都圏でも30~40センチのずれがあった。
金華山から見た牡鹿半島の様子=2016年1月、宮城県石巻市の金華山(川口良介撮影)
金華山から見た牡鹿半島の様子=2016年1月、宮城県石巻市の金華山(川口良介撮影)
 このために、各所の基盤岩に生まれたひずみが地震リスクを高めている。M9・0という巨大地震の影響が出てきているのであろう。この影響は数十年掛かって出るに違いない。

 海溝型地震は一般には日本の沖で起きるが、首都圏だけが海溝型地震が「陸の下」で起きてしまうという地理的な構図になっている。このため、今までも関東地震や元禄関東地震といった海溝型地震が首都圏を襲った。関東地震は死者行方不明者10万人以上という、日本史上最大の地震の犠牲者を生んでしまった。