前嶋和弘(上智大総合グローバル学部教授)

 11月の米大統領選に向けた民主党の候補指名争いは、3月3日の「スーパーチューズデー」の結果、事前の各種世論調査で劣勢だったバイデン前副大統領が14州中、10州を抑えて形勢を大きく変えた。米ニューヨーク・タイムズ紙は、4日の社説で「死の淵からよみがえった奇跡」ともてはやす。

 確かに潮目が変わった感がある。10日に開かれた6州の予備選・党員集会で、バイデン氏が重要州のミシガンなど3州で勝利を確実にした。さらには、世論調査を見ると、17日のオハイオ、フロリダなど4州での戦いでも、多くの州で今度は選挙戦を優位に進めている。

 ただ、この情勢の変化とともに今後の大統領選の流れを大きく左右しかねないワイルドカードへの注目が集まっている。世界を震撼(しんかん)させている「新型コロナウイルス(COVID-19)」というカードだ。

 新型コロナウイルス問題は米国の場合、日本よりも約1カ月遅れで大きな社会問題となっている。初期段階まで、感染がワシントン州などの西海岸の一部州に限られ、感染者も中国への渡航歴がある人たちばかりだった。そのため、感染の深刻化に対する懸念は、日本から見れば、だいぶ遅れていたともいえる。

 状況が変化したのは、カリフォルニア州で中国への渡航歴がない感染者が確認された2月26日だった。さらに、その後はニューヨークなどの東海岸などにも広がっていった。

 一部の大学では、授業をオンライン形式にするなどの対応が進んでいる。テキサス州オースティンで、3月13~22日に行われる予定だった音楽祭や映画祭などの大規模イベント「サウス・バイ・サウス・ウエスト(SXSW)も中止になった。
2020年2月、米南部サウスカロライナ州チャールストンで行われた民主党討論会で発言するサンダース上院議員(左)とバイデン前副大統領(ロイター=共同)
2020年2月、米南部サウスカロライナ州チャールストンで行われた民主党討論会で発言するサンダース上院議員(左)とバイデン前副大統領(ロイター=共同)
 一種の社会的パニック状態に突入しつつあるのも、日本と似ている。ワシントンやニューヨークの友人によると、消毒用アルコールがどの店でも売り切れているという。

 買い占めは一部の食料品にも及んでいる。実際の感染状況以上に、消費者心理は日本と同じようなオーバーリアクション状態になりつつある。