3月8日(米時間)現在、米国での感染は33州、532人になり、死者も21人となった。日本の10日正午現在の感染者数514人、死者9人を既に超えている。数を単純に比較すべきではないかもしれないが、今や「日米逆転」の状況になっている。

 この社会的パニック状態が米国で「政治化」しつつあるのだ。新型コロナウイルス対策については、スーパーチューズデー直前から「トランプ政権の対応が悪い」など、民主党候補にとって格好の「トランプ叩き」の材料になっていた。特に、「米疾病対策センター(CDC)の予算をトランプ政権が削減した」というのが、各候補による政権非難の常套句(じょうとうく)になっていた。

 「CDCの予算をトランプ政権が削減」したかどうか、実際には微妙だ。政府全体の予算見直しの中、トランプ政権は毎年の予算教書で、CDCの予算削減を要求し続けてはいる。

 ただ、議会側の反発もあり、他の多くの政府予算と同じように、ここ数年のCDCの予算はほとんど変わっていない。2020年会計年度(2020年10月~21年9月)は77億ドル(約8千億円)と感染症対策を専門に担う司令塔の組織が不在の日本から見るとかなり潤沢な額である。2020年10月からの2021年会計年度に向けた予算教書でも、今のところ7億ドルほど減額要求となっているが、議会の本格審議はこれからである。

 一方、トランプ大統領にとっては、景気にも大きな影響があるため、的確な対応をアピールしなければならない。二転三転した後、7日、CDCに乗り込んで記者会見したのもその一環である。

 記者会見を見たが、「感染者数が増えるのは、それだけ検査を含めた対策をしっかりやっているからだ」というレッドフィールド所長の横で、トランプ氏は念を押すように「しっかりやっているんだ」と妙に強調していた。その言葉からは、逆に今後の感染拡大に対する世論の反応をかなり気にしているのが明らかだった。
2020年3月6日、米疾病対策センター(CDC)のレッドフィールド所長(右)の隣で記者団に語るトランプ大統領=アトランタ(Hyosub Shin/Atlanta Journal―Constitution提供・AP=共同)
2020年3月6日、米疾病対策センター(CDC)のレッドフィールド所長(右)の隣で記者団に語るトランプ大統領=アトランタ(Hyosub Shin/Atlanta Journal―Constitution提供・AP=共同)
 新型コロナウイルスの感染拡大は急務であるため、トランプ政権と議会が協力して、3月6日にはワクチンの開発や企業の支援などに充てる費用として、83億ドルというCDCの年間予算を上回る規模の緊急対策法を成立させている。緊急性から考えれば当然かもしれないが、社会的パニック状態が予算そのものの大きさも「政治化」させているといえる。

 実際の感染そのものが、今後の大統領選自体にも、今後大きな影響を与えていくのは必至だ。各種政治イベントは選挙の年には欠かせないが、そのイベントが感染源となりかねないからだ。