2020年03月11日 9:54 公開

米大統領選の候補を選ぶ野党・民主党の予備選や党員集会が10日、6州で開かれた。穏健派のジョー・バイデン前副大統領(77)と左派のバーニー・サンダース上院議員(78)の事実上の一騎打ちになったこの争いで、バイデン氏が激戦州ミシガン州などで勝ち、さらに優勢となった。

10日に予備選や党員集会を開いたのは、アイダホ、ミシガン、ミシシッピ、ミズーリ、ノースダコタ、ワシントンの各州。

BBCがアメリカで提携する米CBSニュースは出口調査から、ミシシッピ州(代議員41人)、ミズーリ州(同68人)、ミシガン州(同125人)、アイダホ州(同20人)でバイデン氏が勝つ見通しと速報した。

これによって、夏の党大会が候補を選ぶ際にバイデン氏に投票する代議員は少なくとも820人、サンダース氏は670人になったとみられる。候補指名を確実にするには、1991人の代議員が必要。CBSの推計によると、「スーパー・チューズデー」後の時点で、バイデン氏は代議員を648人、サンダース氏は563人、それぞれ獲得していた。

ミシガン州の結果を受けてバイデン氏はフィラデルフィアで支援者を前に演説し、「今日も良い結果になりそうだ」と感謝した。

バイデン氏は「何も当たり前と思わず、今後も1票1票のために戦い続ける」と述べた上で、サンダース議員やその支持者に感謝し、党や国の団結を呼びかけた。

一方のサンダース氏は10日夜には、公の場で発言しなかったものの、11日には地元ヴァージニア州バーリントンで記者会見し、撤退はしないと表明した。

サンダース氏は「代議員の人数という意味では夕べはこの陣営にとって良い夜ではなかった」と認めつつ、自分たちは若者の圧倒的支持を得ており、「世代間の議論には勝っている」と強調した。

「癒せる指導者」

支持者の前で演説したバイデン氏は、撤退をうわさされた状態からの挽回について「これはこの国の魂のためのカムバック」だったと述べ、民主党だけでなく全ての国民の「全ての家族のため」、誠実でまっとうで尊厳があり信用されるホワイトハウスを取り戻さなくてはならないと強調した。

新型コロナウイルスへの懸念から地元州知事の要請を受けて、この日の投票直前の集会を中止したバイデン氏は、自分たちは保健当局の助言を受けながら選挙戦を続けると説明。その上で、「国や世界中にこれほど不安が広まっている中では、正直で信頼され、真実を語り、安定していて安心を与えられる指導者が必要」で、「戦うだけでなく、人を癒すことのできる指導者が必要」だと強調。自分はそういう指導者になるために毎日努力すると約束した。

さらに、「ドナルド・トランプの『アメリカ第一』政策は、アメリカを孤立させた」と非難し、アメリカが再び世界のリーダーになるため、各国の信頼を回復しなくてはならないと強調した。

サンダース氏とその支持者たちのエネルギーと情熱をたたえたバイデン氏は、ドナルド・トランプ大統領を倒すという共通の目標を一緒に実現しようと呼びかけた。

さらに、全ての国民に支払い可能な医療を提供し、全ての子供に優れた教育を与え、子供が学校で自動小銃を持つ乱射犯から逃げ惑わなくてもいいようにすると公約を繰り返した。

問われる「本選での強さ」

バイデン氏は一貫して、アフリカ系アメリカ人の支持を受けてきた。劣勢からの挽回のきっかけになったサウスカロライナ州やスーパー・チューズデーでの各州に続き、この日もCBS出口調査によると、ミシシッピ州とミズーリ州ではアフリカ系有権者の7割以上がバイデン氏を支持した。

加えて、ミズーリ州での出口調査によると、白人有権者も53%がバイデン氏を支持し、サンダース氏支持は41%だった。2016年の前回予備選では、ミズーリではサンダース氏がヒラリー・クリントン氏に勝っている。

さらに、今回の選挙で重要なキーワードになっている「electability(本選で勝てるかどうか)」については、ミズーリ州の出口調査では62%が、トランプ氏に勝てる確率が高いのはバイデン氏だと回答。サンダース氏だと答えたのは32%だった。

ミシガン州での世論調査では、白人、労組加入者、大卒者の過半数がバイデン氏を支持した。2016年予備選ではサンダース氏がこの3グループでクリントン氏に勝ったものの、今回は白人有権者が51%対45%、組合員が54%対42%、大卒者が51%対44%で、バイデン氏支持に回った。

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サンダース氏は今回も17~29歳の若者の票を集め、ミシガン州では82%、ミズーリ州では76%を獲得した。しかし、どの州でも若者票の割合は全体の12.5%に過ぎなかった。

ただし、もしバイデン氏がこのまま本選に臨むとなった場合は、若者票をどうひきつけるかが課題になる。バラク・オバマ前大統領は2008年、若者票の大多数を獲得した。一方でヒラリー・クリントン氏は2016年、若者票を18%しか獲得できなかった。

ミシガン州でバイデン氏が勝つ見通しになったのを受けて、2月11日に撤退するまで民主党予備選を争っていた起業家アンドリュー・ヤン氏は、バイデン氏支持を表明した。CNNの開票番組にコメンテーターとして出演していたヤン氏は、生放送中に「民主党のプロセスはこれで結果が見えた」と述べ、民主党は「今夜からひとつにまとまらなくては」と強調した。

バイデン氏は予備選序盤で苦戦し、支持率低迷から撤退もうわさされていたが、2月末に南部サウスカロライナ州で圧勝したのを契機に、14州が投票した3日のスーパー・チューズデーでは10州で勝利。序盤で優勢が続いたサンダース氏に逆転した。


米大統領選の州予備選では、夏の党大会に出席する各州の代議員がどの候補に投票するかを決める。今年の民主党の場合、党の候補指名を受けるためには1991人の代議員の支持が必要。予備選・党員集会の得票率に応じて各候補に代議員が割り当てられ、その代議員は割り当てられた候補に投票すると「pledge(誓う)」ため「pledged delegate(誓約代議員、宣誓代議員)」と呼ばれる。

今回の民主党レースには、人種や性別など様々な候補が一時は25人以上も出馬したものの、昨年末に多くの候補が資金不足などから撤退した。今年になって予備選が始まり、サンダース氏の優勢に対してバイデン氏が巻き返すと、複数の中道派候補が撤退バイデン氏を支持した

スーパー・チューズデーで初めて予備選に参加した大富豪のマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長や、エリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出)はどの州でも勝つことが出来ず、それぞれ撤退を表明した。

撤退後のブルームバーグ氏はバイデン氏支持を約束したが、ウォーレン氏はまだ態度を明示していない

新型ウイルスの影響

新型コロナウイルスの感染がアメリカ国内でも拡大するなか、バイデン陣営とサンダース陣営はそれぞれ、オハイオ州クリーヴランドで予定していた10日夜の支持者集会をキャンセルした。

オハイオ州のマイク・デワイン知事(共和党)はこれに先立ち、屋内の大規模集会の中止を呼びかけている。

アメリカでは現在、オハイオを含め13州が新型コロナウイルスの感染拡大について、非常事態を宣言している。

15日夜にアリゾナ州でバイデン氏とサンダース氏の討論会を主催する米CNNは10日夜、感染拡大への懸念から、会場に観客を入れずに実施すると発表した。

アメリカでは10日の時点で1000人以上の感染が確認され、31人が死亡した。

トランプ陣営「2人はコインの両面」

6州の民主党予備選で開票が進むなか、ドナルド・トランプ氏の選挙陣営は声明を発表し、バイデン氏もサンダース氏も「同じコインの両面」で大差はないと批判した。

「誰になるにせよ、民主党の大統領候補は大きい政府の社会主義政策を掲げることになる」とトランプ陣営は述べ、「どちらにしても、トランプ大統領は再選に向けて、食い止められない勢いで邁進(まいしん)している」と強調した。

この日は与党・共和党でもミシシッピ、ミズーリ、ミシガン各州で予備選があり、予想どおりトランプ氏が勝った。厳密に言うと、夏の全国党大会で正式指名されて初めて、トランプ氏は11月の本選の共和党候補になる。

医療、教育、気候変動について

国民皆保険制度のないアメリカでは、多くの有権者にとって医療保険の確保が重要課題だ。新型コロナウイルスの感染拡大によって、医療保険の問題が今まで以上に注目されている。

サンダース議員は常に、公的な皆保険の導入を主張してきた。そのための費用は10年間で30兆ドルだとサンダース氏は言うが、実際にはそれよりはるかにかかるという批判もある。

バイデン氏は、バラク・オバマ前大統領が実現させた医療費負担適正化法(ACA)、いわゆる「オバマケア」の有用性を主張ししつつ、自己負担額の引き下げを提案している。この引き下げには10年間で7500億ドルかかるとバイデン氏は説明している。

学校の改善については、バイデン氏は低所得層が住む地区の学校の予算を拡大し、市場競争力のある給与を教師に提供すると表明。ただし、財源をどう確保するかは明らかにしていない。

サンダース氏は、全ての学生ローンを帳消しにし、教師の最低賃金を保証すると公約。ウォール街の金融機関への課税を財源にするとしている。

気候変動については、両氏とも、パリ協定から離脱したトランプ政権を強く批判している。

具体的な温暖化対策としては、サンダース氏は16兆3000億ドル規模の「グリーン・ニュー・ディール」を提案。2000万人の雇用を創出することで、15年をかけて支出を相殺するとしている。

バイデン氏は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという野心的な計画を掲げている。この費用は最初の10年だけで1兆7000億ドルかかる見通しという。

(英語記事 Six US states vote / Joe Biden extends lead over rival Sanders in Democratic presidential race