2020年03月11日 12:31 公開

米ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は10日、新型コロナウイルスの感染者が多発しているニューヨーク市郊外を「封じ込めゾーン」にすると発表した。消毒作業などのため、州兵を派遣する方針。

クオモ州知事は、同州ニューロシェルが、米国内の症例の中で「おそらく最大規模のクラスター(小集団)」になっていると述べた。

州兵は、ニューロシェル市内の学校の消毒や、隔離措置を受けている人々への食料の配達作業にあたる。

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ニューヨーク州では、米国内で最多の173人が感染。そのうち108人は、ニューロシェルがあるウエストチェスター郡で確認されている。

ニューロシェルから南40キロにある、人口約800万人のニューヨーク市では、これまでに36人の感染が確認されている。


<ニューヨーク州の地図。ニューヨーク市(New York)から約40キロ離れたニューロシェル(New Rochelle)が「封じ込めゾーン」に指定された>

封じ込め作戦の内容とは

クオモ州知事は、人口約7万7000人のニューロシェルについて、移動制限は設けない方針とした。一方で、学校や大規模な集会場所、企業は2週間閉鎖されると説明。また、地元の病院に新型コロナウイルス検査を行う施設を設置するという。

クオモ氏は、「これは劇的な対応だ。この地域では、この国で最大規模のクラスターが発生しており、まさに生きるか死ぬかの問題に直面しているからだ」と述べ、ニューロシェルでの感染者数は「衰えることなく増加している」と付け加えた。

「人々を封じ込めるのではなく、施設を封じ込める作戦だ」

地元メディアは、ニューロシェルでの新型ウイルスのアウトブレイク(大流行)の中心はシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)だと報じている。

礼拝に参加した50代の男性が、この地域での「感染者第1号」とみられている。現在、この男性が訪れたシナゴーグに立ち寄った約1000人が隔離措置を受けている。

米国内でどれほど拡大しているのか

新型ウイルスのアウトブレイクの状況を追跡している、メリーランド州のジョンズ・ホプキンス大学によると、10日午後の時点で、米国内では804人の感染が確認された。

これまでにワシントン州で24人、カリフォルニア州で2人、フロリダ州で2人、ニュージャージー州で1人の合わせて29人が死亡している。

米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は、感染のリスクについて「真剣に受け止め始める」よう求めている。

「我々は国家として適切に、ひっきりなしに、感染リスクは比較的低いと言い続けている一方で、この国の一部地域では、今まさにコミュニティー内で感染が拡大している。ワシントン州、カリフォルニア州、ニューヨーク州、フロリダ州、こうした場所では感染リスクはより高くなっている」と、ファウチ氏はホワイトハウスでのブリーフィングで述べた。

「いまは、国民全体が数カ月前までしていたようなことができない状況だと、この国の人々に自覚してもらいたい。あなたの州では感染者がいないとか、1人しか感染していないとか、そういうことは関係ない。いま自分たちに何ができるのか、真剣に受け止め始めなければならない」

ファウチ氏は、米政府による、地域社会や職場の安全を守るためのガイドラインについて、「この国全体で取り組むべきことだ。(中略)誰もが、『総力を挙げよう、これが我々に必要なことなのだから』と声をそろえるべきだ」と述べた。

首都ワシントンも直撃

ドナルド・トランプ大統領から新しく首席補佐官に任命されたばかりのマーク・メドウズ氏を含む、複数の政治家は、新型ウイルス検査で陽性が確認された人物とともに会議に出ていたことを受け、自主隔離をしている。

トランプ大統領とマイク・ペンス副大統領もこの会議に出席していた。2人とも、この人物とは直接的な接触はしていないが、トランプ氏は、この人物と接触した議長とは握手を交わした。

トランプ氏は、ウイルス検査を受ける必要がないと言われたと明かした。

新型ウイルスの呼称めぐり人種差別論争も

アメリカでは、新型コロナウイルスを「中国ウイルス」や「武漢ウイルス」と呼んだトランプ大統領と複数の共和党議員に対し、人種差別だとの非難が上がっている。

昨年12月に中国で初めて新型ウイルスが確認された後、こうした言い回しが広く使われていた。

しかし、米疾病対策センター(CDC)のロバート・レッドフィールド所長は10日の米下院公聴会で、多くの国で深刻なアウトブレイクが起きていると指摘。新型ウイルスを中国のウイルスと呼ぶのは間違っていると述べた。

これに先立ち、トランプ氏は、自分が計画したメキシコ国境の壁が、新型ウイルスの感染拡大を封じ込むのに役立つだろうとツイートした。

米大統領選での野党・民主党の有力候補ジョー・バイデン前副大統領は、トランプ氏のツイートに対し、「壁1枚ではウイルスは防げない。人種差別でウイルスは防げない。自分の仕事をしろ」と反応した。

集団感染のクルーズ船で下船開始

新型ウイルスの集団感染が確認され、カリフォルニア州サンフランシスコ沖に5日間停泊していたクルーズ船「グランド・プリンセス」が9日、オークランドに入港し、乗客が下船を開始した。

54カ国からの乗客乗員約3500人が乗ったグランド・プリンセスをめぐっては、乗客2人と乗員19人が、ウイルス検査の結果、新型ウイルスによる感染症「COVID-19」を発症していることが分かっている。

イギリス人の乗客約140人は、10日夜にもアメリカを出発し、翌11日に帰国する見込み。帰国後は、2週間の自主隔離を求められることとなる。クルーズ船の運航会社が、イギリスに帰国便が到着した後の輸送手段を手配するとみられる。

イタリアや中国の状況は

新型ウイルスによる影響を最も受けている国の1つ、イタリアでは10日、死者が前日から169人増え、631人に達した。同国での1日あたりの死者数としては最多。また、感染者数は前日の9172人から1万149人に増えた。

中国以外で最も死者が多いイタリアでは、10日から同国全土で移動制限措置が取られている。

一方、中国で10日に新たに確認された感染者の数はわずか19人で、同国での1日あたりの感染者数としては最小となった。

新型ウイルスが最初に確認された中国国内での感染者は合わせて8万754人に上り、3136人が死亡している。

(英語記事 Troops sent to New York virus 'containment zone'