山岡鉄秀(情報戦略アナリスト)

 海外暮らしが長かった私の思考回路は、日本在住の今でも外から日本を眺める感覚のままだ。そして、海外在住者たちと毎日交信して情報提供を受けている。

 そんな人たちが今、頭を抱えて落胆している。外から見ていて、日本の新型コロナウイルスへの対応が緩慢で後手に回り、「危機管理能力が非常に低い」という印象を世界に与え、国際的信用とイメージを著しく低下させてしまったからだ。

 日本国内にいると、それがなかなか実感できないのが問題だ。つまりは、国際情報戦の大敗北だが、実はこれまで散々繰り返してきた「歴史戦」の敗北と同じ構造なのだ。「歴史」はあくまで過去の出来事だが、「新型コロナ」は今現在の問題だからより深刻である。

 なぜ日本は性懲りもなく敗北を繰り返すのか。その答えは単純だ。自らの言動が外からどう見えるか、どう解釈されるか、誤解を防ぎ、好意的に解釈されるにはどうすべきか、といった発想がすっぽり抜け落ちているからだ。

 島国で均一性の高い民族構成、単一言語など、恵まれた要素が国際性を育む上では障害になり得るのは理解できる。しかし、自らに欠けている思考回路を認識して会得する努力が不十分なのも確かで、国内でしか通用しない議論に時間を費やしてしまう癖が抜けない。

 何より、日本政府は自国が五輪開催国であることを忘れてしまったのか。世界中から超一流のアスリートと大勢の観光客が押し寄せる五輪開催国に求められるのは、当然ながら高い危機管理能力だ。

 だから、今回の新型コロナウイルス騒動では、日本政府は大げさなぐらいに他国に先んじて行動し、さまざまな施策を矢継ぎ早に講じる姿勢をことさら見せつけなくてはならなかった。ここで重要なのは、個別の施策にどの程度の効果があるかを考えて逡巡(しゅんじゅん)としてはならない、ということだ。

 まず、できることはすべてやる。結果は後で検証すればよい。アクションファーストだ。そして走りながら考える。
東京五輪マスコットの写真を撮るマスク姿の男性=2020年2月、東京都内(AP=共同)
東京五輪マスコットの写真を撮るマスク姿の男性=2020年2月、東京都内(AP=共同)
 全力を尽くした上で、たとえ今の状況に陥っても、日本への信頼は損なわれないが、理解不能な行動を重ねて感染国になり果てれば軽蔑と嘲笑の対象となる。そして、五輪を失う大失態にもつながりかねない。

 最大の失敗はもちろん、中国からの入国を迅速かつ全面的にストップさせなかったことだ。