2020年03月13日 12:36 公開

アメリカのドナルド・トランプ大統領が11日に発表した、欧州からの同国への渡航を30日間停止する措置をめぐり、怒りの声や混乱が生じている。欧州連合(EU)加盟国は、「相談なしに」決定したとしてトランプ氏を非難している。

アメリカによる新たな渡航制限は、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるのが狙い。13日深夜(米国東部標準時)から実施される。

対象地域は、欧州域内の自由移動を認める「シェンゲン協定」の加盟国26カ国で、アメリカ国民やイギリス、アイルランドは除外される。

今回の制限は、COVID-19への対策を行っていないと非難されてきたトランプ大統領による、大規模な対策強化だ。しかしこの渡航制限をめぐり、ワシントンのみならず海外でも不満の声が上がった。

欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長や欧州理事会のシャルル・ミシェル議長は、新型コロナウイルスによる感染症「COVID-19」のパンデミック(世界的流行)は「世界的危機」であり、「一方的な行動ではなく協力が必要だ」と主張した。

EUに事前通達せず

トランプ氏は12日、渡航制限について、「時間かかる」ためEU側に通達しなかったと明かした。

「我々は迅速に行動しなければならなかった」

また、EUは米製品への関税を引き上げる際、アメリカに相談をしなかったと付け加えた。

「最も積極的かつ包括的取り組み」

渡航制限についてトランプ氏は、「外国からのウイルスに立ち向かうための、近代史において最も積極的かつ包括的な取り組み」だとしている。

トランプ氏は、EUは米国と「同様の予防措置が取れていない」と非難し、新たな渡航制限を正当化した。

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新型ウイルスをめぐっては、米国内で1300人以上の感染が報告されているほか、38人が死亡している。

新型ウイルスが発生した中国に次いで2番目に感染者数が多いイタリアでは、これまでに1万2000人以上が感染し、827人が死亡している。

フランス、スペイン、ドイツでも感染者数が増加している。

株価が急落

トランプ氏は渡航制限を発表した際、貿易や貨物も制限の対象になると述べたため、株価は急落した。しかしその後、「貿易は影響を受けない」、「制限は人だけで貨物は対象ではない」とツイートした。

米ニューヨーク株式市場では12日、ダウ平均株価は10%下落し、ロンドン証券取引所の株価指数FTSEは2008年の世界金融危機以来の最低水準を記録した。

「渡航制限は役に立たない」

トム・ボサート元米大統領補佐官(国土安全保障・テロ対策担当)は、渡航制限を批判するツイートを投稿した。

「欧州に対する渡航制限にはほとんど価値はない。不十分な時間と労力の使い方だ。もっと早くにやっていれば効果はあったが、今ではあまり役に立たない。欧州諸国と同じくらい、我々も感染者を抱えているのだから。地域社会で感染者数を押さえ込む幾重もの対策に注力すべきだ。いますぐに!」

https://twitter.com/TomBossert/status/1238049073279774720


チャック・シューマー上院院内総務(民主党)は、トランプ氏がアメリカ国内で新型ウイルスの検査キットが不足していることに言及しなかったことは「憂慮すべきこと」だとツイートした。


<解説>首都ワシントンのエンバシー・ロウ(大使館通り)への衝撃と落胆――タラ・マッケルヴィー ホワイト・ハウス担当記者

欧州の大使は当然、外交的だった。

匿名を条件に電話取材に応じた外交官は、「我々は、1つの大陸を標的とした対応策ではなく、連携があるべきだったと感じている」と述べた。

トランプ氏による対策は、この外交官や、ワシントンにいるほかの大使を驚かせた。

それでも、この外交官は今回の渡航制限に関する自分の見解や、この制限に対する落胆や怒りを明確にした。「我々は、あまり喜んでいない」と外交官は言う。「喜んでいない」。

他の人々も同様に落胆している。シンクタンク大西洋評議会のダニエル・フリード元駐ポーランド大使は、「反EUバッシングは愚行だ」とし、トランプ氏の発表にがっかりしたと話す。ワシントンにいる複数の現役大使や大使経験者はいま、トランプ氏が次にどう動くかを注視している。大きな不安を抱きながら。

別の元大使はこう話す。「自信がない」と。


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(英語記事 Trump travel ban met with confusion and criticism