編集委員が見せた朝日の「上から目線」は1枚の写真でハッキリします

『田中秀臣』 2020/03/17

読了まで6分

田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 朝日新聞の関係者たちによる発言や記事のひどさが目立つ。特に3月13日、朝日新聞の小滝ちひろ編集委員が、ツイッターの個人アカウントで「(略)戦争でもないのに超大国の大統領が恐れ慄(おのの)く。新型コロナはある意味で、痛快な存在かもしれない」と投稿した問題は最たるものといえる。

 小滝氏は朝日のソーシャルメディア記者として、ツイッターから発信を続けていた。朝日のガイドラインによれば、「ソーシャルメディア記者は、ソーシャルメディア上の『朝日新聞社の顔』」である。

 朝日新聞の顔である人物が非倫理的な発言をしたのは、どう考えても不謹慎というより、まずいと言わざるを得ない。しかも、社会的な批判を浴びて、説明や謝罪もなく、発言もろともアカウントを削除して「逃亡」した。

 会員制交流サイト(SNS)ではよくある話だが、さすがに「朝日新聞の顔」がこんな対応では困る。朝日新聞社は一連の事態を謝罪し、小滝氏のソーシャルメディア記者の資格を取り消した。

 新聞社に属する記者たちがSNS上で発言することは、一般的には好ましく捉えられるだろう。多様な発言そのものに価値があると考えられるからだ。

 また新聞社の「顔」なのだから、どのような問題にどのような責任をもって発言しているのかも理解している。朝日新聞のSNS「公認記者」(ソーシャルメディア記者と同じだと思われる)がどれくらい存在するかは、朝日新聞デジタルの「記者ページの紹介」を見ていただきたい。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 今、このソーシャルメディア記者の一人、藤(とう)えりか氏のアカウントに「個人攻撃」が加えられている。政治学者の三浦瑠麗氏がその攻撃を「適切に批判することと他人を含め攻撃することは全く別物」だと批判していた。

 人としての尊厳を傷つけるような批判や誹謗(ひぼう)中傷は言語道断である。それに藤氏の発言をさかのぼると、小滝氏の行動や自社対応(編集委員登用のあり方)を批判していた。

 藤氏のツイートは、いわば内部批判であった。それなのに、なぜ炎上してしまったのか、さすがに筆者も理解できない。

 ただ、昨今の朝日新聞の新型コロナウイルス問題についての報道に、不信と強い批判の思いを抱く人も多いだろう。「朝日新聞社の顔」であることが、ソーシャルメディア記者の性格であるならば、やはり組織を代表しての存在になってしまうのはやむを得ない。

 言い換えれば、朝日新聞社が公認記者たちのリスク管理を十分にしていないのだ。組織としては、個人記者に社会からの批判を丸投げして逃げてしまっていると表現されても仕方がないだろう。

 そういう無責任な組織の体質にまで踏み込んで、藤氏が自社批判をするならば喝采したい。しかし、藤氏が関わる朝日主宰の映画サロンに、さらなる議論をしたい人を招くツイートもなぜかしている。全く意味が分からない。

 イスラム思想研究家の飯山陽氏のツイートが、問題の在りかを実に明瞭に指摘している。

 朝日新聞の藤えりか記者は、同じく朝日新聞の「コロナは痛快」編集委員を批判するツイートをし、それについた一般人からのコメントにひどくご立腹であるが、同時に自らの主宰する朝日新聞のサロンを宣伝し、人々をそこへ誘導している。私から見れば、全部まとめて朝日新聞である。

朝日新聞東京本社にたなびく同社の社旗(寺河内美奈撮影)
 小滝氏の発言から感じるものは、自らの地位を他に優越したものとする目線の強さである。要するに、傲慢(ごうまん)な姿勢だ。

 朝日の記事を読むと気づくのだが、この姿勢は会社の組織自体が傲慢な社員の態度を育てているともいえないか。最近、それを感じたのは1枚の写真にある。

 東日本大震災で被災し、14日に9年ぶりの全線再開を果たしたJR常磐線を報じた写真で、映像報道部の公式ツイッターでも紹介されている。そのツイートには、「写真は、大野駅(大熊町)近くの #帰還困難区域 を通る列車です」とつづられ、帰還困難区域による立ち入り禁止を示した立て看板と、保護柵の横を電車が通過する画像が載せられていた。

 全線復帰を祝う地元の人たちの目線よりも、なんだか薄っぺらい反政府の姿勢だけが感じられただけである。実にうすら寒い。「反政府」も「反権力」も、ひたすら上から目線なのだ。そこには人々への共感はない。

 この上から目線的な姿勢は、権威を有り難がる心理と表裏一体かもしれない。嘉悦大の高橋洋一教授の最新刊『高橋洋一、安倍政権を叱る!』(悟空出版)は、新型コロナウイルス問題や消費増税で減速する現在の日本経済を背景にした舌鋒(ぜっぽう)鋭い政策批判の書だ。高橋氏は本著で、朝日新聞がローレンス・サマーズ元米財務長官のインタビュー記事を掲載したことについて、朝日の権威主義的な側面に言及している。

 高橋氏はサマーズ氏の発言を次のように整理する。

 日銀を含めた統合政府で純債務残高を見れば、日本は財政危機とはいえない。昨年の消費増税によってデフレ懸念がある。現在はマイナス金利だから、財政拡大して5Gや医療・ITに投資したほうがよい。


 高橋氏も指摘しているように、この意見は、特にサマーズ氏に語らせなくとも、一つの世界的標準でしかない。より具体的で詳細な「処方箋」についても、高橋氏はもちろん、われわれ「リフレ派」という政策集団なら常に唱えていることばかりだ。
最後の不通区間だった浪江~富岡駅間の再開で、JR常磐線が全線開通。双葉駅に到着する車両を地元の人たちが出迎えた=2020年3月14日(佐藤徳昭撮影)
 だが、朝日は身近なインタビューよりも、どうも権威を有り難がっているようだ。だから、高橋氏の意見を朝日が同じサイズの紙面を割いて報じてみたら、どんなに面白いだろう、と思えてくるのである。

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