トランプ大統領は不動産業がビジネス基盤であるためか、「グローバリゼーション」、自由貿易には当初から反対の立場を表明してきた。「アメリカファースト」=「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」がトランプ大統領の立場である。「一国主義」を基本としており、「グローバリゼーション」や自由貿易はアメリカの中・低資産階級にとって災いであると主張している。

 トランプ大統領は、米中貿易戦争を引き起こして「中国は長年アメリカの知的財産を奪い、アメリカから雇用、技術など富を盗んでいる」と非難してやまない。中国が「中国製造2025」で巨額補助金を注ぎ込んで半導体などハイテク覇権を奪い取るという行動に出ているとして、「アンフェア」と批判の限りを尽くしている。

 「グローバリゼーション」の恩恵を一身に浴びた中国が、世界のハイテク覇権を奪おうと「一国主義」に走っているというロジックになる。ハイテク覇権は、経済覇権のみならず軍事覇権につながる。共和党、そしてトランプ大統領を批判している民主党を問わずアメリカは、中国はアメリカの世界覇権を奪おうとしているという警戒感を強めている。

 アメリカの「ラストベルト」では製造業、重工業が衰退して、白人など労働者が仕事を失った。アメリカの中・低資産階級が消滅していった。これは経済のサービス化、あるいは世界競争による産業の新陳代謝でもたらされた衰退という要因が半分だが、中国が人件費コストで圧倒的な優位に立って「世界の工場」になっている事実を要因にする方が誰にも分かりやすい。

 前回の大統領選挙では、「ラストベルトはトランプをアメリカ大統領にした」といわれている。トランプ大統領は、見捨てられていたかつての中・低資産階級の票を掘り起こした。

 トランプ大統領はアップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)に対して「アメリカで生産すれば関税を心配する必要はない」と、iPhone生産を中国からアメリカに戻せと要求している。こうしたトランプ大統領の発言が、失業して貧困層になっている人々に投票させる誘因になっている。

 トランプ大統領は、それ以前にもフォードやハーレーダビッドソンに「工場(雇用)を国外に移すな」と怒ってみせている。

 こうしたトランプ大統領の反グロ-バルな「一国主義」は、大統領選挙マーケティングでは勝利を呼ぶ決め手であることは前回で証明済みだ。資本には国境が存在せずグローバルに動いていくが、選挙の投票権はあくまで国境の内側にある。選挙の票は「ローカル」であり、トランプ大統領はそこを外さない。
米ホワイトハウスで新型コロナウイルスの対策について記者会見するトランプ大統領=2020年3月(UPI=共同)
米ホワイトハウスで新型コロナウイルスの対策について記者会見するトランプ大統領=2020年3月(UPI=共同)
 トランプ大統領のフォード、ハーレー、アップルに対する「工場を国外に移すな」「工場をアメリカに戻せ」というのはアメリカ国内の雇用確保・雇用増への主張である。無理は承知でも、票はローカルであり、有効なメッセージになりうる。