藤井靖(明星大心理学部准教授、臨床心理士)

 次に挙げるのは、実際にあった芸能人の事例である。このような人たちは、なぜインターネット上で「匂わせ」ずにはいられないのか。

・交際相手の芸能人のグッズを自分の会員制交流サイト(SNS)上の写真にさりげなく映り込ませる
・一見何でもない文章の文頭をタテ読みすると、交際相手への愛情の直接的表現になっている
・出演ドラマのシチュエーションや登場人物に交際相手の名前を入れる
・SNSにアップした写真が交際相手の後ろ姿だったり、特定の相手の写真ばかりを意味深に載せる


 匂わせの背景にあるのは、一言でいえば「不安」や「劣等感」、「コンプレックス」である。関係性が続くかどうかの不安、自分は自分が好きな人の配偶者より劣っているのではないかという劣等感、そもそも自分に自信がなくて、コンプレックスが強い、などである。

 そのようなマイナスの感情を抱えたとき、当然その気持ちを解消したくなる。率直に対処しようとするならば、まずは相手から自分の望むような反応を引き出そうとするだろう。「ずっと一緒だよ」「君が一番だ」「私にはあなたが必要だ」などと安心できるようなことを言われれば、一時的には気持ちは落ち着くだろう。

 しかし、人間は社会的動物であり、相手との2者関係だけで十分満足できるかというと、恋愛関係が長期になればなるほど、そうではない。では、何が必要なのかというと、「社会的承認」と、「比較意識に基づくマウンティング」だ。

 社会的承認というのは、文字通り他者や集団から自分たちの存在と関係が公に共通認識されることである。また、人間には比較意識、つまり「人と比べてどうか」で物事を判断し、優位性を主張しようとする特性がある。
写真共有アプリ、インスタグラムのアイコン(ゲッティイメージズ)
写真共有アプリ、インスタグラムのアイコン(ゲッティイメージズ)
 要するに、これは「自分は人と違う特別な存在でいたいけど、みんなが持っている普通の幸せもそれなりに欲しい」ということでもある。

 では、有名人や芸能人は、どのようにしてその気持ちを満たすのか。当然のことながら、人の目を気にせずデートを重ね、多くの時間をともに過ごし、普通に結婚して、一緒に日々生活していければ、上記の欲求は自然と満たされる。