2020年03月19日 12:54 公開

イギリスのボリス・ジョンソン首相は18日、新型コロナウイルス対策として、20日から公立の小中・高等学校を休校にすると発表した。期間は決まっていないが、警察や医療、教育など地域社会に必要な職種の保護者を持つ子どもや、支援が必要な生徒に対しては、引き続き学校を開放するという。

また、イングランドとウェールズでは今年度の学年末試験は行わない。スコットランドと北アイルランドについては今後、決定される予定だ。

幼稚園や私立の学校、シックス・フォーム(大学進学のための2年制高校)なども、この勧告に従うよう求められている。

イギリスでは18日時点で、新型ウイルスによる感染症(COVID-19)の患者が2626人に達し、死者は104人となった。17日の感染者1950人から1日で700人近く増えたことになる。これまでに5万6221人が検査を受け、5万3595人が陰性だった。

政府は、イングランドでの検査数を1日当たり2万5000件と、これまでの2倍以上に拡大する方針。また、様々な行動制限で影響を受ける企業への支援や、賃借人の保護といった経済対策も発表した。

こうした中、ロンドンの外国為替市場ではポンドが対ドルで1985年以来の安値を付けるなど、経済の混乱が続いている。

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ジョンソン首相は16日にも様々なCOVID-19対策を発表したが、その中に学校閉鎖は含まれていなかった。

18日の記者会見でジョンソン氏は、「(感染者の)右肩上がりの増加を抑制するため、学校を閉鎖する必要があると考えている」と説明した。

首相は全国の校長や教師に対し、医療従事者や警官、教師など「キーワーカー」の子どもの世話をしてくれていることに感謝した。その半面、こうした子どもたちが高齢の家族など、新型ウイルスへの警戒が必要な人たちの間に「取り残されてはいけない」と語った。

ギャヴィン・ウィリアムソン教育相は下院で、今年度は全国共通の学年末試験は行わず、学校ごとの実績表も公表しないことを明らかにした一方、「子どもが必要とする認定を受けられるよう」試験委員会と協議していると語った。

イギリス各地の学校ではすでに閉鎖に向け、宿題パックやオンラインでの活動の準備などが始められている。

イングランド主任医務官のクリス・ウィッティー教授はBBCのテレビ番組に出演し、学校が子どもにとって「危険な場所」というわけではないと説明。閉鎖は感染の速度を遅らせるための措置だと話した。

保護者からは懸念の声

学校閉鎖により、中等教育修了一般資格(GCSE、高校卒業試験に相当)やAレベル(大学入学試験に相当)といった試験が受けられない生徒が出ることから、こうした子どもを持つ親からは懸念の声が上がっている。

また、一人親の世帯や、親が自営業の世帯でも心配が増している。

ベッドフォードシャー在住のサラさんはBBCの取材に対し、「買い占めが横行し、苦労している中、学校の方が子どもたちにとって安全で清潔な環境なのではないか」と話した。

自営業で双子を育てているベルファスト在住のヴィクトリアさんは、「家で子どもたちの面倒を見なくてはならない。収入はどこから入るのか?」と不安を語った。

また、GCSEに向かって2年間、一生懸命勉強してきたというアリス・シンプソンさんは、「試験を目前にして、それがなくなってしまった」と話した。

BBCのハナ・リチャードソン教育編集長は、新型ウイルスが広まり、教師も自主隔離を行う中で、多くの学校がドミノ倒しのように崩壊し始めていたと指摘する。

政府の発表により今後の方針は決まったものの、閉鎖期間や自宅学習のやり方、親が家にいられない場合の子どもの世話など、不透明感はさらに高まっているという。

ポンドは35年ぶりの安値

ロンドンの外国為替市場では18日、ポンドが売られ、1ポンド=1.15ドルと1985年以来の安値を付けた。1日で5%の落ち込みとなった。

新型ウイルスによる経済への打撃を抑えるため、財務省はさまざまな対策を発表しているが、市場ではその効果を疑問視する声があがっている。

Markets.comのチーフアナリスト、ニール・ウィルソン氏は「これほど長くポンドが売られる状況は初めてだ」と説明し、「政府の大規模な支援策は、政府の借り入れが大きくなることを意味している。一体どうやってそれを払うのか?」と述べた。

株式市場でも、航空会社や旅行会社の株価が大きく落ち込み、FTSE100種が4%下落した。

より安全なドルへ

リシ・スーナク財務相は17日、イギリス企業に対する3500億ポンド(約44兆円)の刺激策を発表。うち3300億ポンドはビジネスローンの保証に充てられる。

保証には事業所にかかる税金の免除や、小売店やパブなどへの補助金のほか、航空各社への支援も含まれている。

しかし投資家らは、各国が国境を封鎖したり集会を禁じたりと、多くの経済活動が停止している中では、政府の支援策は痛みを和らげているにすぎないと受け止めている。そのため、より安全な米ドルを買う傾向が強まった。

イギリスでのその他の動きは以下の通り――。

  • 各国が渡航制限を設ける中、イギリス政府は航空各社と連携して在外イギリス人の帰国を支援している
  • 各地のスーパーでは、買い占めを抑えるため購買制限が行われている。高齢者だけが買い物が出来る時間帯を設けている店舗もある
  • イギリス王室のベアトリス王女は、5月末に予定していた結婚式の計画を見直すと発表した。王女はすでに、バッキンガム宮殿での披露宴を取りやめている
  • スコットランド自治政府は、かねて実施を求めていたイギリスからの独立をめぐる住民投票を今年は実施しないと発表した
  • 毎年恒例の音楽祭「グラストンベリー・フェスティバル」が延期された
  • マンチェスターの刑務所で新型ウイルスの感染者が発見された。受刑者の感染はイギリス国内では初。法務省は、受刑者13人と職員4人が隔離されていると発表した

(英語記事  Coronavirus: UK schools, colleges and nurseries to close from Friday / Pound plunges to its lowest level in over 30 years