2020年03月19日 13:35 公開

アシタ・ナゲシュ、BBCニュース

新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、アメリカの保健衛生当局は家族を亡くした人たちに対し、葬送の方法をこれまでとは大きく変え、葬儀にライブストリーミングを取り入れるよう強く促している。

勧告をしているのは、米疾病対策センター(CDC)。全国葬儀ディレクター連盟と全米各地の葬儀業者を対象にしたオンラインセミナーで、葬儀は参列者の少人数を絞り、参列しない人にはストリーミング動画で葬儀の様子を公開すべきだと呼びかけた。

これは、コロナウイルス関連で亡くなった人からウイルスに感染するリスクがあるからではない。CDCは、そうしたことが起こり得る証拠はないとしている。

そうではなく、他人と一定の距離を置く「社会距離戦略」の助言を守れるようにするためだ。

参列は近親者だけに

CDCで伝染病を研究するデイヴィッド・ベレンデス博士は、オンラインセミナーでこう話した。「葬儀の計画を立てるとき、できれば人数は限定するように。その代わりにライブストリーミングを利用し、参列するのは近親者だけにするのがいいかもしれない」。

これ以前にもCDCは、会合は最大50人までにするよう勧告。一方、ドナルド・トランプ大統領は、集会は10人を超えないよう指示した。

こうした制限は、多くの出席者が70歳を超えた高齢者か基礎疾患のある弱い人と考えられる式典では、とくに大事だ。

実は、この指示が出る前から、アメリカの葬儀業者はライブストリーミングの提供を開始していた。中には葬儀の直前になって、必要に迫られて提供したケースもあった。

ニューヨーク州シラキュースのある葬儀業者は地元ニュースサイトに、牧師がウェブカメラを通して葬儀を執り行ったと述べた。同州で出された移動制限により、じかに行えなかったからだった。

死者へのキスを禁止

アメリカよりもっと先に、葬儀の方法が変化している国もある。

イギリスでは公的機関からの指示が出る前から、一部の葬儀業者がライブストリーミングを提供してきた。ノース・ヨークシャーのある業者は、以前からライブストリーミングを提供してきたが、通常62ポンド(約8000円)の料金は現在取っていないとBBCに話した。

アイルランドでは、参列者が死者にキスするのを禁止している。アイランドの葬儀ディレクター連盟はさらに踏み込み、すべての葬儀を延期すべきだと提言している。


しかし、おそらく最も厳しい措置を取っているのはイタリアだろう。新型ウイルス感染拡大の中心となっている同国では、葬儀が一切禁止され、簡単な祈りをささげることしかできなくなっている。

信仰や文化、伝統を問わず、葬儀と告別式は悲嘆やカタルシス、多くの人々による追悼にとって重要な時間だ。

では、それらが根本的に変わってしまうとき、人々はどうすれば気持ちの面で折り合いをつけることができるのか。

イギリスの葬儀業者で、グリーフ・カウンセラー(悲嘆に暮れている人のカウンセラー)も務めるリアナ・チャンプ氏は、「新型コロナウイルスによって、人々の悲しみ方は完全に変わってしまうだろう」と予測する。

「人は悲しんでいるときには特に、気持ちの区切りをつけ、儀式に臨むプロセスが必要だ。それには、人生を分かち合う人、愛する人との親密さが欠かせない」と、チャンプ氏はBBCに語った。

「実際の葬儀から物理的な距離を置くことは、人が前に進むうえで、ごく当たり前のことになるかもしれない。私たちはこの新たな考え方とあり方に適応する必要がある。世界は変わり、社会は変わった。新型コロナウイルスのようなものが世界を直撃するときには、日々の暮らしだけでなく、死に方も変える必要があることを認識しなくてはならない」

悲嘆に暮れ、愛する人の葬儀に参列できないときは、「いろんな人と連絡を取り、率直に話をし、思いを伝える」ことを、チャンプ氏は勧める。

「人間として、親密さは必要だ」、「新型コロナウイルスのせいで、携帯電話やメールを介さないとならないなら、そうするより仕方がない。それでも私たちは、他の人と心を通わせ、互いに助け合うことが必要だ」


「無力感に襲われる」――マーク・ロウエン、BBCニュース(ローマ)

イタリアでは静かな殺し屋が人々の生命、それに死まで奪っている。

新型コロナウイルスによるイタリアの死者は2000人以上に急増している。大多数は北部の小さな町の住民で、それらの町では突然の死体の増加への対応に苦慮している。火葬場には24時間稼動しているところもあり、遺体安置所は棺おけ置き場に使われている。さらに、隔離のための制限も出されている。

2月26日、ミリアム・カサリさんの母ジュセピーナさんは、休暇でジェノバにいる間に新型ウイルスに感染し病気になった。封鎖された「危険地域」の町、カスティリオーネ・ダッダに暮らすミリアムさんは、町を出ることができなかった。5日後、彼女とその息子は、ジェノバに行く特別許可を得た。しかし3月3日の朝、渡航準備をしているときに、ジュセピーナさんは亡くなった。

「一番つらかったのは彼女のところに行けなかったこと」とミリアムさんは言う。「無力感に襲われる。何もしてあげられない。打ちのめされる。現実感がない」

公衆の集まりを限定するため、葬儀は規制によって禁止されている。ジュセピーナさんの遺体が戻ってきた時には、司祭が簡単な祈りをささげただけで素早く埋葬された。

「もし違った死に方をしていたら、受け入れるのはもっと簡単だったと思う」と、ミリアムさんは自宅のテレビ電話で話す。「母は見捨てられたと感じたに違いないだろうし、私は何もできなかった。このことは決して乗り越えられない」。


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(英語記事 Coronavirus: US funerals move to live-streaming