上西小百合(前衆議院議員)

 いまや新型コロナウイルスの影響は世界規模となった。当初中国の武漢にて新型コロナウイルスの一報が報じられたとき、ここまでの事態になることは想定していなかった。

 一方で、私自身その一報を以下のようにも捉えていた。

 「差し迫る春節期に、日本は中国からの観光客を入国制限しなければならなくなるだろうが、果たしてできるだろうか。中国人観光客が来ないとなると、日本の観光業界は大変な損失を被ることになり、反発も起こりうる。『英断』という言葉など、とっくの昔に消え去った政治環境で、そのプレッシャーに安倍総理は勝てないだろう」と。そして考えていたことが、まさにその通りになった。

 春節になると多くの中国人観光客が日本国内にあふれ、結果的に日本国内でも新型コロナウイルスの感染拡大は現実のものとなった。そしてその影響はとどまるところを知らず、日本の観光業界は未だ冷え込みを続け、倒産する企業も出てきている。春節が日本経済にもたらす恩恵が多大なものであることは百も承知だが、そこは歯を食いしばって耐えなければならなかった。

 加えて、国民の日常生活もパニック状態だ。ドラッグストアやコンビニエンスストアからマスクや消毒用アルコールはもちろんのこと、なぜかティッシュペーパー、トイレットペーパーやキッチンペーパーまでもが姿を消した。

 私は幸いにも昨年末にストックを多めに購入していたということと「なんとかなる」というポジティブシンキングで、少量ではあるもののお困りの高齢者の方々にお分けするなどの余裕があった。それでも、そもそも紙類の生産は新型コロナウイルスとはほぼ無関係。それにもかかわらず、会員制交流サイト(SNS)上で無名の誰かが流したデマに右往左往する人々の多さに驚いた。

 他にも納豆やもずくまでもが、免疫力が向上し新型コロナウイルス対策になるということで爆売れしたそうだ。ここまでくると、ばかばかしいコントのように感じてしまう。免疫力を上げたければ、平素から栄養バランスのよい食事を取る必要があって、ゲームじゃあるまいし栄養価の高い食物を摂取した瞬間にパワーアップするわけがない。花こう岩や玄武岩に関してはもはや言葉も出ない。しかし、その爆買いの渦中に巻き込まれている人々は至って真剣なのだから、よく言えば「人を疑わない」、悪く言えば「情報に対する民度が低い」という国民性が浮き彫りになった形だ。
品薄を知らせる紙が張られたドラッグストアのトイレットペーパー売り場=3月4日、東京都内
品薄を知らせる紙が張られたドラッグストアのトイレットペーパー売り場=3月4日、東京都内
 情報過多社会の弊害とも言えるだろうが、まずは物事をうのみにするのではなく、自分で調べて考えるというステップが抜け落ちている人が多すぎる。SNSやワイドショーなどのやじ馬的な部分「だけ」から情報を取る習慣のある人は、冷静な判断を心掛けてほしい。

 また、今回は新型ウイルスということで解明されていないことが多い。それにもかかわらず、テレビでは専門家でないコメンテーターの割合が平時と変わらなかったということが気がかりであった。視聴者は「どうすれば感染しないか?」と目を血眼にしてテレビにかじりついているので、専門家と専門家でないコメンテーターからのコメントを真に受けて、同列に受け取ってしまう。これが国民の過剰反応にもつながったのであろう。