片岡亮(ジャーナリスト)

 人気女優の米倉涼子が3月24日、27年間所属してきたオスカープロモーションを3月末で退社することを発表し、芸能界に衝撃を与えた。「新しい活動については、近日中にご報告をさせていただきます」と後日改めて発表があるようだが、関係者によると「他に移籍するのではなく、個人事務所でやっていくと聞いている」という。

 近年、大手の芸能事務所を退所する所属タレントが増えた。公正取引委員会(公取委)が、芸能プロダクションとタレントの専属契約に違法性があると見て、移籍や独立を阻む問題の調査に乗り出したことが大きい。公取委はこのような事務所が強い立場を利用した契約が独占禁止法に当たるとの見解をまとめ、原則禁止している。

 かつて日本の芸能界を暴力団が仕切っていた名残で、以前は独立したタレントが干されるということも当たり前だった。背景には、芸能プロがテレビやスポーツ紙をはじめとするマスコミに強い影響力を持ってきたことにある。不自然に出演アーティストが決まってしまう『NHK紅白歌合戦』も、このゆがんだ構図の産物だといえる。

 いまや、そのことを多くの人が感じているから、世間では「事務所からの独立」はタレントが「巨悪」と戦っているように見えるだろう。ただ、芸能プロの圧力が強いほど、当のタレント自身が得をしてきたのも事実だ。

 長くヒット曲のない歌手でも紅白に出場できているし、ちっとも面白くない芸人が、他の人気タレントと同じ事務所所属という理由だけでバラエティー番組のひな壇に座っていられる。情報番組のコメンテーターやドラマのヒロインも、実力通りなら人選は全く違うものになるだろう。

 プロダクションのプッシュを最も必要とするはずの芸能人が事務所から出たがる、その理由は一般社会の離職や転職と大差ない。ただ、優先順位が違うだけなのだ。
女優の米倉涼子=2019年10月(桐原正道撮影)
女優の米倉涼子=2019年10月(桐原正道撮影)
 一般社会では、「会社を辞める理由」で上位を占める回答といえば、「給与が安い」「休日が少ない」「将来への不安」といった待遇面における不満だ。加えて、上司のパワーハラスメントなどの「人間関係」、そして「やりがいを感じない」という仕事内容への不満がある。