2020年04月02日 10:56 公開

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、アメリカの保健当局が、すべての国民に対して外出時に顔を覆うよう推奨するかどうかを議論していることが明らかになった。

米紙ワシントン・ポストが入手した米疾病対策センター(CDC)の内部資料によると、普通の布製のマスクでさえ、ウイルス感染のリスクを軽減するのに役立つ可能性があるという。スーパーマーケットでの買い物などの単純作業を行う場合も、公共の場でマスクを着用することで感染拡大の防止につながる可能性があるとしている。

この指針は、ホワイトハウスの新型コロナウイルス対策タスクフォースの間で検討するために共有されていると、ワシントン・ポストは報じている。

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ドナルド・トランプ米大統領は、「スカーフが使える」と提案している。

現行のガイドラインでは、マスクは医療従事者、病人、介護者のみが着用する必要があるとしている。

米国内では現在、N95マスクや外科手術用マスクが不足しており、医療従事者は1枚のマスクを複数回使用するよう、あるいはマスクがない場合はバンダナを使用するよう指示を受けている。

これまでに米国内で感染が確認された人は19万人以上に上り、約4000人が死亡している。

マスク使用をめぐる論調の変化

いまのところ公式ガイダンスへの変更はなされていないが、ここ数日の間に、アメリカ当局の論調が明らかに変化している。

今年2月、ジェローム・アダムス公衆衛生局長官は、「マスクを買うのをやめろ! マスクには新型コロナウイルス感染から一般市民を守る効果はない。一方で、患者の治療にあたる医療従事者がマスクを入手できなければ、医療従事者自身や地域社会を危険にさらすことになる!」とツイートした。

さらに、あるインタビューでは、「適切なマスクの着用方法を知らない人たちには、自分の顔を頻繁に触る傾向がある」ので、マスクを着用することで新型コロナウイルスに「感染するリスクが高まる」可能性があると発言していた。

ところが、アダムス氏は1日、米ABCテレビの番組「グッドモーニング・アメリカ」で、「我々は、無症状の感染が相当数拡大しているのを確認している」とし、CDCはマスクに関するガイドラインの見直しを求められていると明かした。一方で医療用マスクについては、最も必要としている医療従事者のために残すべきだと強調した。

この前日の3月31日、アメリカの感染症の第一人者の米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長のアンソニー・ファウチ博士も同様に、ホワイトハウスの新型コロナウイルス対策タスクフォースが、より幅広いマスクの使用を推奨するかどうかについて積極的に議論していると述べた。

ファウチ氏は米CNNに対し、医療従事者用のマスクが十分に供給されれば、「医療現場以外でのもっと幅広い、地域全体におけるマスクの使用を推奨すること」に自分の「考えが傾く」だろうと述べた。

一方で、複数専門家は、マスクを着用している時も、「社会的距離」措置や徹底的な手洗いを続けることが重要だと強調している。

マスクは有効か? そしてなぜ混乱が?

マスクの使用をめぐっては、多くの混乱や矛盾したメッセーじが数多く上がっている。

ファウチ博士でさえ、3月31日に「マスクをめぐるあらゆることが混同され、混乱が生じている」と認めた。

次の3つの異なる問題が結び付けられ、混乱につながった。

  1. マスクに感染リスクを減らす効果があるかどうか
  2. 一般市民の使用を正当化するため、マスクに市中感染を防ぐ十分な効果があるかどうか
  3. 医療従事者の物資不足にどう対処するのか

まず1つ目について。新型コロナウイルスは、感染者が話したり、せきやくしゃみをした時に空気中に飛沫(ひまつ)が飛び散ることで感染が広がる。

そのため、飛沫に接触するリスクのある医療従事者は、浮遊粒子を少なくとも95%除去できるN95マスクの着用を求められている。N95マスクがない場合は、外科手術用マスクの着用を求められている。

2つ目について。一般によるマスクの使用は効果的なのかどうか、医療の専門家の間で議論がなされている。

多くの人は、手洗いや社会的距離を保つことの方が効果的だし、マスクを着用することで誤った安心感を持つ可能性があるほか、間違ったかたちでマスクに触れたら感染する可能性があると主張している。専門家もまた、地域社会でより幅広くマスクを使用することに効果があるのか、明確な根拠はないと主張している。

一方で、マスクの着用にはメリットがあるとの見解を示す医療専門家は増えている。

専門家は、新型コロナウイルスによる感染症「COVID-19」に感染していることを知らず、症状も出ていない無症状感染者が、知らず知らずのうちに他の人にうつしてしまうのを防ぐのに、主に役立つとしている。

マスクは、他の人のくしゃみやせきによる飛沫感染のリスクを軽減することに役立つかもしれない。正しい着脱方法を学ぶこともできる。

専門家はまた、特に手洗いなどのほかの対策と組み合わせることで、たとえ小規模なものであっても、感染を減らすための措置をとる価値はあるとしている。

ファウチ氏はCNNに対し、「効果を発揮するために、対策が100%有効なものでなければいけない、ということはない」と述べた。

3つ目について。供給が限られている中、特にすべての人を守るという重要な役割を担っている医療従事者など、マスクを最も必要としている人のために残しておく必要があるという点で、幅広く意見が一致している。

ファウチ氏は、「誰もがマスクを着用すれば、マスクを必要とする医療従事者に行き届かないかもしれない」と述べた。

一方で、「十分な量のマスクがあるなら(中略)我々は人々がマスクをつけるべきかということについて、スタンスを変える必要があるかもしれない」と付け加えた。

ここ数日、医療専門家は新しいアプローチの提案を始めている。医療用品を使い果たすことなく感染者数の上昇曲線を平坦にするため、一般市民に対し、非医療用の布製のマスクを着用してみるよう呼びかけている。布製マスクは自分で作ることも可能だ。

各国のマスク事情は

アジアの一部地域では現在、誰もがマスクを着用しているのが基本になっている。より安全で、配慮のある行動に見える。

中国大陸、香港、日本、タイ、台湾には、健康な人であっても誰もが新型ウイルス保有者の可能性があるという幅広い想定がある。こうした連帯の精神に基づき、自分から他者を守る必要があると考えている。

これらの国の政府の中には、国民全員にマスクの着用を促しているところもある。中国の一部地域では、マスクを着用しないと逮捕されたり、罰せられる可能性すらある。


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(英語記事 US considers cloth face masks for public